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4.退屈知らず!
沙弥は、本当に楽しい子だ。
三人とも、心の底からそう思っていた。
「沙弥と一緒にいると、退屈しないわね」
「ホントだね~」
緒美と智夏が、そう言った。
結局沙弥は、先ほどの漫才の内容を大幅に改めるとともに、小さな子でも知っていそうな、流行りの歌をメドレーで歌うことにしたようだった。思い切りが良くて、決定が早い。
「悩みがなさそう。だなんて、思ってないわよ?」
「思ってるっしょ!? めっちゃ思ってるっしょ!?」
「思っていないわ」
沙弥をからかっていじる緒美。当然沙弥は、納得いかない。
「あたしだって、思春期真っ盛りな女子なんだからね! 悩みの一つくらい、あるよ!」
たとえば……。
「んー? 沙弥の悩みかぁ。そだなぁ。……今日の晩ご飯のー。サラダにかけるドレッシングを何にしようかなー? とか? そんな感じ?」
明穂はにこにこしながら、沙弥にそんなことを言った。
彼女は、見た目こそ美形のお姉ちゃんだけど、実際はとてもほわほわした、穏やかな性格の子なのだ。そのギャップに驚く人も多い。
「そうそう! 和風がいいか、オニオンがいいかあるいはサウザンアイランドがいいかそれとも青紫蘇かなー! 悩むなー! って、ちゃいますがな! そじゃなくてー、悩み! もっとちゃんとしたの!」
子犬のようにきゃんきゃんと騒がしいツインテール娘、沙弥。彼女のテンションに合わせて、二房の髪もぴょこぴょこと揺れているように見える。
「じゃあ。恋煩いでもしているのかしら? ……クラスの男子とか」
緒美が適当に言うと。過敏に反応する人が一人いる。
「え? ちょっとまってそんな。初耳だよ。嘘だよね? 沙弥、そんなのひどいよ? 浮気? 相手はどこの男子? 私、いらない子? 捨てられちゃった? やっぱ男の子がいいの? 信じてたのに~! よよよよよ」
途端にえぐえぐと、涙目になる明穂。メンタルが、とても弱い。
「しとらんわーーーーーーーっ!」
「ひゃんっ!」
すぱぁんッと、乾いた音。
沙弥のハリセンが、今度は明穂に炸裂した!
そんなやりとりを、智夏と緒美は、微笑ましそうに眺めているのだった。
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