第一話

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「やっぱ羨ましいなぁ……」 「何言ってやがる。一生女に困る事のないお前の方が、周りの男達から羨ましいがられてんだぜ」 以上の理由から、世間一般の榊家に対する認識は『世界各地に散らばる巨大な名家』というものに留まっている。 しかしそれは表向きの話であり、世界各地で絶対的な知名度と存在感を誇る上、力を隠す事なく生活している者が大半なので国及び国際機関による情報統制の効果は殆ど無いと言える。 「あ、それはそうと……」 「断る」 「まだ何も言ってないけど……?」 「どうせ、お前の彼女と和解しろってんだろ。聞き飽きたぜ」 「か、彼女じゃないから!」 「あぁ、すまん。正妻だったな」 「側室もいるみたいな言い方止めて!?」 この無意味な会話は2人が顔を合わす度に繰り返されており、優貴はともかく仁の方はうんざりしている。 「大体、何を持って和解なんだよ」 「え……それはほら、お互いに謝ってさ……」 「断る。お前、あの件で俺が悪かった点を言ってみろよ」 「えっと……えっと……」 「無えだろ。ったく……賞賛目的じゃ無えって言っても、命助けたのに罵倒されたんだぜ?その上で優しく接しろって?俺が聖人君子にでも見えんのかねぇ……」 2人の出会いは2年前、高校の入学式まで遡る。
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