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シンデレラの魔法
朝、目が覚めると、僕は自分の部屋のベッドにいた。
体はきれいにされ、律のパジャマを着ている。
行為の後、気絶するように眠ってしまった僕を律がここまで運んでくれたのだろう。
万が一母さんが起こしに来たとき、律の部屋のベッドで一緒に眠っているところを見られたりしたら大変なことになってしまう。
それでも律が隣にいないことが寂しい。
「……仕方ないか」
僕は溜息と共に小さく呟くと、重い体を起こしベッドから出た。
制服に着替えようとしたとき勉強机の上に何かが置かれていることに気づく。
律からのバースディプレゼントだった。
綺麗にラッピングされたそれの上に、『誕生日おめでとう、陽馬。俺がデザインして、初めて作ったものです』と達筆な文字で書かれたカードが乗っている。
……律……。
ドキドキしながらラッピングを解いて行くと、現れたのは真っ白なシャツ。
とても珍しい形をしたボタンがつけられ、大きめの胸ポケット、襟は緩やかな曲線を描いている。
お洒落には疎い僕の目にさえセンスの良さが伝わって来るものだった。
何よりそれは律がデザインし作り上げてくれた、まさに世界に一つだけのシャツ。
「律……!」
僕はシャツを抱きしめたまま部屋を飛び出すと、隣の律の部屋をノックした。
「律? ……いないの?」
何度ノックしても返事はない。
どうやら部屋にはいないようだ。
学校に行くにはまだ早い時間だからきっとダイニングかリビングにいるのだろう。
僕が階下へ降りようとしたとき、ちょうど母さんがキッチンから出て来た。
「母さん、律は?」
「律くんなら、早朝補習があるからってもう学校行ったわよ」
……なんだ……。一秒でも早くこの服のお礼が言いたかったのに……。
僕は自室へ戻ると、小さな鏡の前でシャツを自分の体に当ててみる。
こんなにお洒落な服、垢ぬけない僕には似合わないんじゃないかと心配したけど、自分で言うのもなんだが結構しっくり来てる。
これも律の才能のなせる技なんだろう。
今日学校から帰ってきたら、早速この服を着よう。
律は何て言うだろう?
まるでドレスを与えられたシンデレラのような気持ちで僕はそのときを待った。
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