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完璧な人間
「佐藤律? 陽馬の新しい兄弟って、もしかしてG高のあの佐藤律なのかよ?」
学校の休み時間、僕が律の話をすると、親友の学(まなぶ)は目を丸くして驚いた。
「何? 学、律のこと知ってるの?」
こちらも驚いて聞き返すと、呆れたような学の反応。
「陽馬って本当色んなことに疎いよな。ここらで佐藤律を知らないやつってまずいないぞ。何よりあのルックスだしな」
うん、まあそれは認めるけどね……あれだけの容姿をしていれば目立つだろう。
しかし律が有名なのはそれだけが理由ではなかった。
「俺の知人にG高のやつがいるんだけど、佐藤律って、勉強も毎回学年トップなんだって。教師たちの間ではT大学現役合格も行けるだろうってさ」
「えっ……」
その事実は僕を打ちのめした。
T大学は僕の第一志望の大学で、けれども今現在の成績ではまず無理だろうと先生から言われていたからだ。
あれだけ顔もスタイルもよくて、その上頭までいいなんて、神さまはどこまで不公平なんだろう……。
「陽馬、すごいやつが新しい家族になったなー」
学に憐れむような視線を投げられ余計に落ち込んだ。そんな僕を見て、学が慌てて言い繕う。
「で、でも、まあ、ものは考えようじゃないか。勉強も教えてもらえるし、お洒落の仕方だって教えてもらえるじゃんか」
「……学、ますます落ち込んで来るんだけど」
「え? そうか。ま、まあまあ。今日は放課後ハンバーガー奢ってやるから元気出せって」
パシパシと背中をたたき、学が精いっぱいの慰めを言ってくれた。
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