彼を思って……

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彼を思って……

 そして男の悲しさか僕の体はいとも簡単に反応してしまう。  ……やだ……僕ってば……。  酷い自己嫌悪と律に対する罪悪感に苛まれながらも、僕の右手は制服のズボンへ伸びて行く。  ジッパーをゆっくりと降ろし、下着の中へと手を入れる。 「……っ……」  下半身からじんわりと快感が込み上げて来て、僕は声を殺して小さく喘いだ。  律の手で触れられることを想像しながら、僕の手の動きは段々大胆になって行く。 「……あっ……んっ……」  それでも決して律の名前は呼ばなかった。  その名前を口にしてしまえば、何となく全てが終わってしまうような気がして。  そして、まさに高みへと昇りつめようとする瞬間、ノックもなしに勢いよくドアが開けられた。 「おい、陽馬」 「――――!?」  まともに僕と律の目が合い、時が止まったかのような気がした。  律は切れ長の目を見開いて驚いていたが、やがて口元に薄っすらと笑みを浮かべて、僕が自慰に耽っているベッドの傍へとやって来た。
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