終点

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終点

 バンの前後をバイクで挟み、一行はどこかへ向かっている。中心部を離れ、山の方へと向かっていた。  そして車内では、女がまだ、ナイフを突きつけられていた。 「離したらどうだ。危ないぞ」  真秀が言うと、ナイフを持つ男はやや狼狽え、ナイフを少し離して、 「おかしなまねをするなよ」 と真秀に言う。  巻き添えにしたのは自分達の方かも知れないと思うと、余計に、その女にもけがをさせるわけにはいかない。 (反撃は、着いてから考えるか)  そう考えて大人しくシートにもたれた。  スマホはとうに、取り上げられている。  やがて車が止まったのは、山に中にある、廃屋の前だった。近くに厩舎も見える。 「ここって……」  霙が、動物病院で聞いた場所と一致する事に気付いて、真秀を見た。 「ああ。こいつらが、言ってた奴らだろうな」  小声でやり取りをし、促されるままに車を降りる。  そのまま歩かされて入り口まで来たところで、足を止め、リーダーが言った。 「サバゲーって知ってるだろ。あれをするんだがなあ。今日はビッグなゲストがいるから、遊び方も特別だ。本物の拳銃があるんで、お前で試し撃ちしてやるよ」  言うと、市議会議員の息子が、得意そうにショルダーバッグから拳銃を抜いた。  真秀と霙が、表情を引き締めた。 「女を俺達と遊ばせるなら、お前は助けてやってもいいぜ」  言うそいつに、真秀は冷笑を返した。 「そんな気はないだろ?こっちもない」  それにリーダーとゲストは笑った。 「この女はどうする?こいつは好きにしていいのか?」  人質にされている女に顎をクイッとやって言うが、それに真秀は詰まらなさそうに答えた。 「そいつはお前らの仲間だろ」 「ええーっ!?」  霙が声を上げるのに、解説する。 「最初はわからなかったけどな。車の中でも落ち着いてるし、拳銃を見せられても驚いてないしな」  霙はわなわなと震えながら、女を指さした。 「じゃ、じゃあ」 「ああ。心配して損したな。放っておけばよかった」  女はニヤリと笑って、真秀に言う。 「冷たいのね。  ねえ。私も楽しみたいわよ。こっちをもらっちゃだめなの?」  これにリーダーとゲストは目を見交わしたが、即、真秀が断った。 「断る」 「フラれてやがんの。ダッセー」  リーダーに言われ、女は目を吊り上げてリーダーを睨み、続いて真秀、霙と睨んだ。 「あっそ。じゃあ、好きにすればいいわ。死んでも知らないけど!」  霙は勢いよく手を上げた。 「はい!私も嫌だから、真秀と一緒で!」  彼らは真顔で真秀と霙を見て、盛大な舌打ちをした。 「ああ、そうかい、そうかい。だったら期待通りに、2人一緒にあの世まで行かせてやる。後悔するなよ」  言い、真秀と霙に銃口を向ける。 「中に入れ。2分したら中へ入って行く。狩りの始まりだ。  せいぜい、楽しませろ」  真秀と霙は囲まれていて、逃げ場も無い。 「行くぞ」  真秀は霙に声をかけ、廃屋の中に足を踏み入れた。  そこはマンションを建設していたところだったのだが、途中で資金が尽きて放置されているというものだ。基礎的なところはできているが内装などは全くで、コンクリートが打ちっぱなしで、ドアも窓もないし、灯りもない。 「どうするのよ、真秀」 「人数を減らして外に出る。窓もないし、できるだろう。後は、隣の牧場に逃げ込む」  霙は震える拳を握り込んだ。 「わかった」 「危ないから、前に出るな。  サバイバルゲームをするんだったな。武器を奪ったら使えるか」 「ええ。使ってるのと同じ物もあるしね」 「わかった。手に入れてみよう」  真秀はあっさりと言って、見晴らしのいいロビーになる予定だったらしい1階に潜むのは諦め、霙を連れて階段を上がった。  そして、身を潜める。  そこで2分経ったのか、玄関から入って来たらしい靴音がした。 (さあ、来い。雪は絶対に守る)  奴らを明確に、敵と認定した。
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