ひまわり町の猫端会議

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ひまわり町の猫端会議

『ひまわり町の猫端会議』  備考一 「ここからは、猫語を日本語に翻訳してお送りします」 「ディスプレイがついたにゃ。みんな、いるかにゃ?」 「アオエいます。にゃ」 「ココノエもいるにゃ」 「二丁目のタマは?」 「いますにゃ」  草木も眠る丑三つ時。  飼い主たちが眠った後に、彼ら四匹の猫たちの会議が始まる。 「用意に手間取ったにゃ。人間が使っているから簡単きゃなと思いきや、案外、難しいにゃ」 「あれ? クノエとマツエにゃ?」 「今日はお休みにゃ」  備考ニ 「ここからは、『にゃ』を省いて翻訳します」 「それで、シロエ」  シロエのディスプレイには、不機嫌そうな顔をした黒猫が写る。 「なんだ。ココノエ?」 「急におれらを集めてどうした? こっちは夕飯もそこそこに集まっているんだ」 「うわぁ〜。出たよ。ココノエの八つ当たり」  ニシシシシと意地悪く笑うのは、ココノエの隣に写るロシアンブルーのアオエ。 「なんだよ。アオエ。文句あんのか?」 「べっつに〜」  それでも、意地悪く笑い続ける三毛猫に、その下に写る三毛猫が溜め息を吐く。 「早く本題に入ろうよ。飼い主が目を覚ます前に」  三毛猫のタマは、時折、背後を確認しながら話す。 「そうだな。早速入るか。まず、五丁目のまとめ役である白猫のハルが行方不明になった話から……」  シロエを始めとする会議に参加した猫たちは、このひまわり町の猫役員。  町内会の飼い猫から野良猫の情報を網羅して、困っている猫がいれば手を貸して、住民を困らせている猫がいれば叱りに行く役割を持っている。  ここ最近は、在宅ワークとやらで会社に行かず、自宅で仕事をする飼い主と仲違いして、家出をした猫の捜索。  各家庭から排出される残飯が減った事で、特定の飲食店の残飯を狙って喧嘩する野良猫たちの仲裁が、主な仕事。  これまでは、飼い主が仕事で自宅を離れている間や、在宅ワークに集中している間に、こっそり出掛けては捜査や仲裁に入っていた。
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