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シロエの家は飼い主を含めた家族全員が在宅ワークをしているので、家の中に居場所がなかった。
どこに行っても、「あっち行って」、「こっち来ないで」と言われるばかり。
家出してしまう猫の気持ちも理解出来なくもなかった。
「飼い主の仕事先によって違うのか?」
「それもあると思う」
「ズルイぜ。アオエばかり」
「へへ〜ん。羨ましいだろう!」
そんな雑談をしていると、タマが「しまった」と後ろを振り向く。
「飼い主が起きてしまった。最近、眠りが浅いから……!」
「それはいけない。今夜はこれでお開きにしよう」
みんなが画面から消えた頃、タマのパソコンからは「タマってば。またパソコンを悪戯して!」という飼い主の声が聞こえてきた。
シロエたちは姿を見られない内に、慌ててパソコンの電源を消したのだった。
「あっ、しまった。次の会議の日を決められなかった!」
シロエが叫んだ時には、既にパソコンの電源は消えており、自分の顔しか映っていなかったのだった。
画面に向かって叫んでいたからだろう。
シロエの声を聞きつけた飼い主がやってきた。
「うるさいぞ。シロエ……」
「でも、まだ会議の日が……」
「ニャアニャアうるさいぞ。近所迷惑だ。全く……」
飼い主に抱えられると、「あれ? パソコン出しっぱなしだったか?」と言って、パソコンのコンセントを抜かれる。
「ああ! 肉球でコンセントを入れるのは一苦労なのに……」
「うるさい。ほら、寝るぞ」
飼い主のベッドに放り投げられたシロエだったが、抜け出す前に隣で飼い主が寝始める。
「おやすみ。シロエ」
「そんな。飼い主……」
飼い主に抱えられたシロエは、渋々、一緒に寝たのだった。
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