ひまわり町の猫端会議

4/4
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
 シロエの家は飼い主を含めた家族全員が在宅ワークをしているので、家の中に居場所がなかった。  どこに行っても、「あっち行って」、「こっち来ないで」と言われるばかり。  家出してしまう猫の気持ちも理解出来なくもなかった。 「飼い主の仕事先によって違うのか?」 「それもあると思う」 「ズルイぜ。アオエばかり」 「へへ〜ん。羨ましいだろう!」  そんな雑談をしていると、タマが「しまった」と後ろを振り向く。 「飼い主が起きてしまった。最近、眠りが浅いから……!」 「それはいけない。今夜はこれでお開きにしよう」  みんなが画面から消えた頃、タマのパソコンからは「タマってば。またパソコンを悪戯して!」という飼い主の声が聞こえてきた。  シロエたちは姿を見られない内に、慌ててパソコンの電源を消したのだった。 「あっ、しまった。次の会議の日を決められなかった!」  シロエが叫んだ時には、既にパソコンの電源は消えており、自分の顔しか映っていなかったのだった。  画面に向かって叫んでいたからだろう。  シロエの声を聞きつけた飼い主がやってきた。 「うるさいぞ。シロエ……」 「でも、まだ会議の日が……」 「ニャアニャアうるさいぞ。近所迷惑だ。全く……」  飼い主に抱えられると、「あれ? パソコン出しっぱなしだったか?」と言って、パソコンのコンセントを抜かれる。 「ああ! 肉球でコンセントを入れるのは一苦労なのに……」 「うるさい。ほら、寝るぞ」  飼い主のベッドに放り投げられたシロエだったが、抜け出す前に隣で飼い主が寝始める。 「おやすみ。シロエ」 「そんな。飼い主……」  飼い主に抱えられたシロエは、渋々、一緒に寝たのだった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!