ダメ出しが続いて

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 名良橋は伝票を持って立ち上がると、「じゃあ、次の作家との打ち合わせがあるので」と去って行った。  チャリーンと店のドアにつけられたベルが鳴って名良橋がいなくなると、僕はテーブルの上に突っ伏した。 「じゃあ、どうしろって言うんだよ……」  複数の打鍵音が店内に響き渡った。  僕は水野という名前の専業作家だ。  数年前に自サイトで投稿していたファンタジー小説が出版社の目に留まって、作家としてデビューした。  それまで、昼は会社員として働き、夜は自宅のパソコンに向かって作品を書く日々を送っていた。  たまに上手く書けた作品を出版社で開催される公募に送っていたが、全く芽が出ず、落選した作品を自サイトに投稿していたのだった。  この時も、とある出版社の公募に落選したファンタジー小説を自サイトに投稿していた。  とある男子高校生が異世界に召喚されて、そこの世界の魔王に捕われている姫君を救い出して、元の世界に戻るという、王道ファンタジー小説。  けれども、僕は少しだけ王道から変えた。  その救い出した姫君というのが、実は魔王の娘が成り代わった姫であり、本当の姫君は未だ魔王に捕われたままだった。  真実を知った男子高校生は元の世界に帰らずに、再び魔王の元に赴く。  そこで、今度は実は魔王は真の黒幕によって操られており、その黒幕こそが捕われていた姫君だった。  そこで明かされるのが、姫君と魔王の関係。  同時期に生まれた魔王の娘と姫君は、実は入れ替わっており、姫君こそが魔王の娘だった。  二人を入れ替わらせたのが、男子高校生を召喚した魔法使いであり、魔法使いの戯れによって、二人の少女は入れ替わってしまったのだった。  真実を知った姫君は復讐しようと、実の父である魔王を使って、魔法使いごと世界を滅ぼそうとした。  それを阻止したのが、男子高校生だった。  姫君の企みを知って、旅の途中て出会った仲間たちの力を借りて世界を破滅から救うと、男子高校生は元の世界へと帰って行った。  姫君は封印されて、実は彼女こそが姫君だったという魔王の娘は、本当の両親の元へと帰った。
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