ダメ出しが続いて

4/5

5人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
 僕は話しかけるが、シロエは興味がないようにそっぽを向いた。 「聞いてくれよ〜。お前をモデルにした作品がボツになったんだよ〜」  僕は手短に『ひまわり町の猫端会議』のストーリーと、先程、名良橋とあった出来事を手短に話す。  その間も、シロエは塀の上で丸くなって寝ていたのだった。 (まあ、いつもの事だし)  シロエが寝そべる塀の前を通り過ぎた。  その時だった。 「アホにゃ」 「えっ……」 「もっと面白い話を書けにゃ」  どこからともなく、声が聞こえてきたのだ。 「えっ!?」  辺りを見回すが、他に人はおらず、塀の上にシロエが寝そべるだけであった。 「まさか、お前が……?」  僕が話しかけると、シロエは塀から飛び降りて、向こう側へと向かった。  塀の先は見知らぬ民家なので、勝手に入る訳にもいかず、僕はシロエの姿を見送るだけに留まった。  ゆらゆらと白い尻尾が消えて行くのを、ただただ見送ったのだった。  そのまま、シロエを見送ると頭の中に閃いたものがあった。  僕は自宅の安アパートまで走って帰ると、部屋に駆け込む。  脱ぎ散らかしたままの服を蹴り飛ばし、乱れたままの布団の上にちゃぶ台を乗せると、ノートパソコンを開く。  カタカタとしばらく打鍵音だけが部屋の中に響き渡り、日付が変わるギリギリに書き終わる。 「出来た!」  そのままの勢いで、スマートフォンを取り出してテレビ電話を起動すると、名良橋に電話を掛ける。  夜も遅いからか、なかなか出てくれない名良橋に焦れつつも、執拗にテレビ電話を掛け続けたのだった、  しばらくして「どうしたんですか……」と、寝ぼけ眼の名良橋がテレビ電話に出る。 「聞いて下さい。今度こそ次回作が思いついたんです」 「じゃあ、明日の朝になったら読むので、パソコンに送って下さい……」 「おやすみなさい……」と言って、名良橋はテレビ電話を切ったのだった。  僕はパソコンでメールを立ち上げると、先程作った新作のプロットと冒頭のデータを添付する。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加