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「優、超かわいいー!」
「本当、むっちゃ似合うねー」
裾をワンカールしてもらうと、驚くほど女の子っぽくなった。
うわぁ、うれしい!
「優ってかわいくなったよねー」
「うん、さすが恋する女の子は違うよねー」
「えっ、ほんと? 色気出た?」
「色気はまだまだだけど……」
菜摘ちゃんの即答にがっくりする。
「でも、本当にすごくかわいくなったよ。さらにこんな優を見たら、遥斗先輩も放っておけないよね!」
「うんうん、きっとメロメロだね!」
「…………遥斗先輩がメロメロなところなんて想像できないよ」
適当なさやちゃんの言葉に、あり得ないと首を振る。
それでも、ちょっとはかわいいと思ってくれるといいなーなんて思っていたけど──
その日、部室に行ったら、遥斗先輩は私をまじまじと見つめた。
なにか言ってくれるのかなと思ったら、ふいっと目を逸らした。
目を逸らされた…………!
がーん。
菜摘ちゃんたちの言葉を真に受けるんじゃなかった。
二人とも本気で言ってはくれていたけど、よく考えたら、すぐ私をかわいいって言うし、いつも過剰に友達フィルターがかかっていた。
やっぱり私にはこんな女の子っぽいのは似合わないんだ。
落ち込んでいたら、わしゃわしゃと頭をなでられた。
慰めてくれているらしい。
慰めが必要なほど似合ってない?
「………そんなに似合いませんか?」
「いや、似合ってる」
ドキンと胸が跳ねる。
先輩は超真顔だ。からかっている様子はない。
「じゃあ、なんで髪の毛をぐちゃぐちゃにされてるんでしょう?」
「さぁ、なんでだろうな?」
先輩は本当に不思議そうに首を傾げた。
ある日、部室に行ったとき、中から真奈美先輩の声がした。
真奈美先輩は時々こうして遊びに来てくれる。
ごたごたしていたときも来てくれて、慰めてくれたり、絡まれているところに居合わせたときには助けてくれた。
「優ちゃんが…………」
部室をノックしようとしたとき、自分の名前が聞こえて、止まった。
なに? 私の話題?
それに答える遥斗先輩の声。
なにを言っているのかわからなかったけど、ふいにはっきり聞こえた。
「…………付き合うわけないだろ!」
「………って、…………でしょ?」
「…………抱く気になんかならない!」
私は凍りついた。
そっかぁ。そうだよね。
遥斗先輩にとって、私は対象外。だから、そばにいられるんだもんね。
色気がないから、安心できる存在。
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