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それなのに、先輩は私を見たまま、完全に固まってしまった。
「先輩? なにか言ってくださいよ!」
私が言うと、遥斗先輩は目を瞬いて、フリーズから動き出した。
「………付き合うなんてあり得ないって言っていただろ?」
「あれは、先輩が私なんかを好きになるはずないって思って」
「むしろ、好きにならないはずがないだろ」
先輩の率直な言葉に顔を赤らめる。
でも、すぐ口を尖らせて言った。
「先輩だってあり得ないって言ってたじゃないですか。それに抱く気になんかならないって」
「聞いてたのか。あれは……」
先輩が目を逸らして、つぶやく。
「優に俺は相応しくないし、大事すぎて抱くなんて考えられないってことだ」
頬を赤らめながらそんなことを言われて、ギュッと胸が締めつけられる。
大事すぎるって……。
「先輩……好きっ!」
思わずその首元に飛びついてしまった。
慌てて先輩が抱きとめてくれる。
「好きだよ、優」
耳許で先輩がささやいて、髪の毛を愛しそうになでてくれる。
ウソみたい。
幸福感でいっぱいで胸が爆発しそう。
幸せを噛みしめていると、先輩がそっと身を離した。
両手で私の頬を挟み、至近距離から目を合わせる。
「好きだ」と言った唇が私のに重なった。
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