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7.ランタン、湖面、水面に銀
――トイと湖面の夢。
トイがナツメに日記の書き方を教わる一月ほど前の事だ。
ナツメが朝起きると、向かいのベッドでトイが顔を赤くしているのが見えた。かと思えば、真っ青になって狼狽して、またすぐに頬に朱が差す。
しばらく眺めているのも面白かったが、心配になったナツメはトイの肩を抱いてベッドに腰かけた。
「あっ!」
「おい、トイ。大丈夫か?腹でも壊したか?」
「いやっ、そのっ、まあ……うーん」
「はっきり言わないと分からないぞ。まあ、言いづらいなら無理するな。飯にしよう。久しぶりに粥が食べたいって言うから今日の朝は店主の代わりに俺が作る事にした」
トイはそれを聞いて「嘘!!」と顔を輝かせたが、またすぐに眉をひそめ、俯いた。
「おい、本当にどうした?体調が悪いなら、薬を……」
「待って!ナツメ、待って……」
ナツメは何も言わず、トイの隣に座り、トイが言葉を見つけるまで待っていた。
ナツメが何回目かの欠伸を噛み殺したころ、恥じらいと不安を器用に混ぜたような不思議な表情で、トイは最近よく見るようになったという夢の話をはじめた。
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