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「なんと。古今東西、国王の求婚をはぐらかす女性は、エレノアをおいて他におらんでしょうな」
「まったくだ。僕は彼女を、そういう意味では疎い女性だと思っていたが、とんでもない。僕の心を読んでいるようだ。僕が少しでもその気になったら、巧妙に理由をつけて離れてしまう」
「確かに、騎士団にいたころから人気がありましたから。断るすべはいくらでも磨けたでしょう」
アリスは、エレノアに人気があったという事実に敏感に反応した。
「……そうなのか?」
「当たり前でしょう。おそれながら、陛下はどこに目をつけておいでですか? あの容姿で騎士団なんぞに入団して、男が放っておくものですか」
そういえばアリスは、自分と出会う前のエレノアを想像してみたことがなかった。しかし、アンドリューの言うとおりだ。豊かな黒髪に抜けるように白い肌、煌めく蒼い瞳と優しげな顔立ちに洗練された立ち居振る舞いは、貴族の娘として何の申し分もない。むしろ、剣を振るう人生を選んだことが不思議なほどである。無論、世の男たちが見逃すはずがない。
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