終章 名前を呼んで

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 アリスが真剣な顔で悩んでいるのを見て、アンドリューが苦笑した。 「ご心配なさらずとも、誰かとどうにかなったという話は聞きませんでした。お心を乱されますな」 「……本当なんだろうな」 「このアンドリューを信じられないとおっしゃいますか」  アンドリューは賢明にも詳細を語らなかった。あれほどの美女をものにしたともなれば、仮に一晩だけのものであったり、力ずくであったとしても、必ず自慢話が出回っていたはずだ。交友関係の広いアンドリューが全く耳にしなかったのだから、彼女が手籠にされたことはないとみていいだろう。  しかし、潔癖な王子がそんな騎士の実情を聞きたがるはずもない。余計に心配させてしまうだけである。 「すまない。アンドリューを疑ったつもりはないんだ」 「かまいません」 「……しかし、それならすでに」 「他に男がいるのではというご心配も無用です」
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