終章 名前を呼んで

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 アリスの懸念を先回りしてたたきつぶすように、アンドリューが冷静に告げる。 「彼女がどれほど頑固で融通のきかない人か、貴方も身をもって体験されたでしょうに。あれほど真剣に陛下に全てを捧げて戦ってきたあの人が、またもう一人別の人間を熱烈に愛するなどという、器用なまねができるはずがない」  エレノアに他に相手がいる心配を取り除いてくれたのはいいが、アンドリューの話し方は小さな子供を諭すようだ。アリスは目を細めた。 「……僕はそんなに単純か?」 「すねる必要はありません」 「すねてなどいない」 「少なくとも今の陛下の疑問は単純だったと言わざるを得ませんが」 「……もういい」 「彼女が陛下から逃げている理由、私は知っていますよ」  アリスは顔を上げた。 「どういうことだ」 「彼女は裏切り者の娘です」
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