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アンドリューの唐突な物言いに、アリスは眉をひそめた。
「……なんだ、急に」
「その汚名は一生ついて回ります。その彼女を騎士として使い続けるだけではなく、この国の王妃にするとなると、周囲は黙ってはいないでしょう。妹君を犠牲にして玉座につかれた時点で、貴方には大きな試練が待ち受けているのですから」
望んでオフェーリアを死なせたわけではない。それがアリスの本心だったが、それは空虚な言い訳にすぎなかった。アリスは確かに妹に剣を向けて挙兵したのだし、その時点で結果的に妹の命を奪うことも想定していたはずだからだ。
「これ以上貴方に重荷を背負わせるべきではない。これ以上貴方のお立場を悪くするようなことがあってはならない……彼女がそう考えるのは至極当然のことでしょう」
「アンドリュー」
突然寒気に襲われたような気がして、アリスは思わず声を上げた。
「何が言いたい? まさか」
「責任感の強い人だ。戦の直後は逃げることなど考えてはいなかった。病も癒え、体調が万全ならば、まだできることはいくらでもある。この国に残り、貴方の騎士として尽力し、バーンズワースのした罪を償うことが最善だと考えていたと申しておりました」
アンドリューはすでに、くすりとも笑っていなかった。
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