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「しかし、王妃になるとすれば話は別だ。相手は国王です。彼女がどれほど頑固でも拒みきれるものではない。そして、彼女が王妃となったら、世間はどう考えるでしょう? 裏切り者の娘が国王に嫁いだ。王は何を考えている? この国はどうなる?……残ったオフェーリア派の貴族のつけ入る隙を与えるだけだ。貴方の味方をしていた諸侯たちも、あわよくば自分の娘を嫁がせたいと考えているでしょうから、それはもう落胆するでしょう。落胆するだけならばまだ良いでしょうが、それが大きければ大きいほど、貴方への憎悪も深まりやすい。何も良いことはない。それだけは絶対に避けなくてはならない」
「アンドリュー」
「陛下には貴方がついていてくださっています。もう何も心配はいりません。私は、必要ない」
「何?」
「先ほどエレノアが私に言った言葉です」
アリスは目を見開いた。アンドリューが続ける。
「臣下ならば、彼女のことは諦めなさいと申し上げるべきなのでしょう。貴方が彼女を手に入れても百害あって一利なしと、十分すぎるほどに承知しております。しかし陛下は、恐れ多くも私を友人だとおっしゃってくださった。ならば私も、臣下として必要なことだけ進言するのは不公平というもの」
アンドリューは真剣な眼差しでアリスを見つめた。
「お行きなさい。貴方が何より手に入れたかったものを、逃してはならない」
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