終章 名前を呼んで

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***  アリスの頭の中では、エレノアの行き先が二つ思い浮かんでいた。  一つは、どこかの領地に身を寄せることだ。この方法をとるなら、国内を比較的自由に動けるエレノアはすぐにも宮廷を離れることができるだろう。ただ、実家はすでになく、アリスを裏切った家の者であるエレノアが頼れる貴族などそうはいない。考えられるのはライオネル公爵家だったが、アンドリューに別れの言葉を告げて姿を消したということは、公爵家にはいないはずだ。となると、国内にとどまる可能性は限りなく低くなる。  もう一つは、この国を出ることだった。出国するのならそれほど遠くへは行っていないはずだ。貴族が国を出る手続きは煩雑なうえに、今は新国王の即位を目の前にして官吏も目の回るような忙しさだ。一人の女騎士が、任務があるでもなくただ出国したいという申請があっさり処理されるとは思えない。
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