終章 名前を呼んで

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 先ほどまでアンドリューと言葉を交わしていたのなら、まだそう遠くへは行っていないはずだ。単身旅に出るのならなおさら、居場所は限られる。アリスは必死で関所や厩を見て回った。しかし、どこで話を聞いてもエレノアの居所を掴むことができなかった。  兵に命じて関所や城門を封鎖することは不可能ではなかった。しかし、そんな大がかりなことをするには何かしらの理由が必要だ。そしてそれ以前に、王族としてではなくただのアリスとして彼女をつなぎとめたかった。  焦る気持ちを抑え込んで、アリスは考えた。もう一度関所を回ってみるべきだろうか。それとも、申請許可がおりるのを待っている間、もっと他の場所にいるのだろうか。 「他の場所……」  思いついたのは、北離宮、つまり、アリスの母親が眠っている場所だった。初めて彼がエレノアを信頼した場所。いちかばちか、アリスは再び走り出した。
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