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エレノアの着衣は、普段のような軍装ではなかった。丈夫な木綿で作られた服の上に鎖帷子をつけただけの簡単なものだ。王宮でこの国の王の傍に仕える者の身だしなみではない。
「どうしても、行かなければならないのか?」
エレノアは目を伏せた。
「はい」
「何故? 君は忠義の騎士だ。家が僕を裏切っても、君はたった一人でも僕のために戦ってくれた。そうじゃないのか?」
「父の裏切りは、娘である私にも責任があります。そして私自身も、貴方をお守りできなかった罪深い騎士なのです」
「……僕が、信じられなかったからか」
これには、エレノアは一切の迷いなく首を振った。
「違います。陛下の騎士でありながら陛下をお守りできなかった。それだけが真実です。けれど、お優しい陛下は私を罰したりはなさらないでしょうから。それでは皆に示しがつきません。こうするのが一番です」
「君はいつも僕を守ってくれていた。傍にいてくれた……僕が信じられなかった時もだ。僕は君に助けられてここまで来た。それも真実だろう」
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