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「陛下ならばそうおっしゃってくださるだろうとは思っておりました。しかし、良いのです。もともと、こうするつもりでしたから」
「何?」
「病が癒える前は、お供するのは父を倒し、貴方に即位して頂くまでと決めていました。その後の世に私は必要ない。私がどこへなりと消えて死んでしまえば、陛下が真実を知ることもない……貴方を傷つけることもなかったのに」
「毒のことは僕に告げずに行方をくらますつもりだったと?」
「はい」
「それが本気で僕のためだと思っていたのか」
「無論にございます」
「馬鹿を言うな!……どうして」
アリスは首を振った。
「君はどうしてそうなんだ。どうして、全て自分で決めてしまうんだ。僕は、そんなに頼りにならないか?」
「頼るなど……一介の騎士が国王陛下に甘えるようなことがあってはなりません」
「頼むから『陛下』はやめてくれ」
アリスは懇願するように言った。
「君は、僕に王にならなくていいと言ってくれた。結果はこうなってしまったけれど、僕はあの言葉を忘れたことはない。君の前でだけでいい。ただのアリスでいたいと思うようになった……君にとって、それはいけないことだったのか?」
「いえ」
「僕はやはり国王にならなくては存在価値のない人間か?」
「違います」
「……もう、僕の隣はうんざりか?」
「違います」
エレノアは堪えるように目許を歪めた。
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