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「国に残って父と私の罪を償うことが、私の生きる道だと思っていました。でも、それは自分への言い訳なのではないかと……貴方にお仕えしたいばかりに、お傍を離れたくないがために私が考えた、浅ましい願いなのではないかと、そう」
エレノアの紺碧の瞳から涙が零れ落ちた。どれほど自分が傷つけられても、心ない言葉を浴びせられても折れなかった心が、折れた。
「私はなんと罪深いのか。貴方の御心を裏切り、傷つけ、修羅の道を歩ませておきながら、なんと、私は、ここまで」
身を縮めてむせび泣くエレノアの体を、アリスが黙って抱き寄せた。戦場では手練の騎士をいくらでもなぎ倒す剣の腕の持ち主だが、こうしてみると思いのほか華奢だった。その体が強張って息を呑んでも、アリスは絶対に離さなかった。
「罪ならば僕も犯した」
「おやめください、陛下」
「君を疑い、傷つけた。あれほどの軍勢を率いておきながら身勝手にも単独で行動し、挙句実の妹を死なせた」
「陛下」
「アリスだ」
アリスはエレノアを強く抱きしめたまま、耳元で囁いた。
「聞いてくれ、エレノア。ずっと前に、君が教えてくれた。僕は、僕の道を選べば良いのだと。その答えが、やっとわかった気がするんだ」
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