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第二章 幼き王子と護衛騎士
「私が殿下の、護衛騎士ですか?」
「悪くない話であろう?」
エレノアは息を呑んだ。しつこく実家に呼び戻されたと思ったら、こういうことだったのか。
マルス王国内の有力な侯爵家であるバーンズワースの家を継ぐのは、エレノアではなく兄の役目だ。
だから自分は自由にして構わないだろうと解釈し、彼女は十四歳のころ、国内有数の王立騎士学校に入学した。それから三年、十七歳になったエレノアはすでに、女性でありながら騎士としての頭角を現し始めていた。
この家を出たかったからだ。騎士となり、王家の近衛兵になるか、それができなければどこかの貴族の騎士となれたらいいと思っていた。
家で大人しくしていれば、政略結婚の道具にされるだけの人生が待ち受けている。それだけは嫌だった。
これも家のためと思える家ならば、政略結婚も構わない。しかし、二言目には出世だ金だと口走り、そのために人を陥れることも厭わない父親が、エレノアは苦手だった。この家を残すためだけに一生を終えたくはなかった。
そう決意したはずなのに、結局父の思うままだ。思えば、エレノアが騎士になると言い出した時も、さほど反対されなかった。今になって理由がわかる。いかようにも使えるから放っておいたのだ。
「もうすでに騎士団にも話は通してある。明日にも殿下にお会いすることだ」
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