暖かすぎる兄弟愛

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「あら、旦那様がまたうたた寝してるわ」 「ええ、誰か近くに行って、毛布を掛けて差し上げるか、起こして差し上げて」 「昨日うたた寝してた時は私が起こしに行ったのよ。だから今日はあなたが行って頂戴」 「嫌よ! 私は絶対に嫌! あんな死体に近づきたくないもの……」 「こらっ! あなた、今、絶対に言ってはいけないことを言ったわよ。あれは旦那様の弟なの。死体なんかじゃないのよ」 「だけど、前に辞めて行ったメイドたちが、ひそひそ言ってたわ……旦那様は、体の弱かった弟さんが亡くなると、心が壊れてしまわれたのか、弟さんを妙な薬剤に浸けて、腐らないようにして、それで今のように話しかけて……」 「それだけじゃないわ! 本当は、弟さんは未だ生きていたのに、これ以上体が痩せ細る前にと言って、わざと手に掛け――」 「あなたたち、お黙りなさい」 「……」 「私たちは旦那様に仕えるメイドなのよ。旦那様の意図を汲んで、旦那様の思うとおりに仕事をしていれば良いの。分かったわね。あれは旦那様の弟さん。今日も元気で無邪気に走り回っておられたのよ。分かったわね――」
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