変革する世界

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変革する世界

『ガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーン .. 鳴り止まぬ弔いの鐘。 紺碧と白亜の島城は、 ウーリューウ藩島の高台に座し、 城の鐘塔から知らされる。 この音は、 弔いと合わせて、 穢れ祓いも 意味するのだ。 一刻は響く、 祓いの鐘が、間は 藩島周囲 数海里の交易船を 総て静止させ 港ドックに強制帰航させる。 夥しい船が 往き来する 漁業基地と同時に、 国際港島として 交易や王帝領の税船管理する ウーリューウ藩島でも、 この弔い祓いの鐘が鳴るが間は、 海が 完全に凪ぐ。 カフカス王領が藩島の主、 王将軍 テュルク・ラゥ・カフカスが、 城の、地下獄牢から地上へ戻り 最上階の 己が執務室に 戻って尚、掻き鳴らされる鐘。 「有能な侍従長は仕事が早い。」 王帝都でなら、重厚な色調家具で 飾られるであろう、 執務室は 温暖な藩島風デザインで 王将軍の書斎机であっても 真っ白な大理石が輝き明るい。 その上に 細工トレーが幾つも 置かれ、 テュルクが指示した 宰相補佐女官の 部屋に残された物品が 並べられていた。 「此れは、、羽筆か。」 テュルクが そのうちの1つを 手に取る。 「何も施して無いのだな。」 テュルクの言葉に、部屋の近達が 返事を返す。 「マイケル補佐女官様は、それが 敢えて良いと。魔充石も仕込ま れませんでした、、粋だと。」 そうか、マイケルは 魔力が無ったのだなと テュルクは 近達の返答に頷く。 「ならば、マイケルの書簡は 全て手書きであったという事か」 魔充石の考案者が? 「可笑しな、、拘りだな。 そう 思わないか? グラン?」 とてつもなく淋しげな口調で、 テュルクに そう返された、近達グランは 少しだけ微笑んで 「インク壺に、手で羽筆を 浸して、自分の手で書かれる。 そんな、宰相補佐女官様、、」 でしたよ。 テュルクに 静かに答えると 窓の外に視線を反らした。 何故なら、 テュルクの手にあった、 羽筆が 音もなく蒼い焔に 燃え、消えたからだ。 「テュルク様。、、」 グランの眉間に 悲しみの皺が寄るのを主君に 見えては、 この主を、さらに 自責の念に捕らわせてしまう。 「テュルク様、何か、飲み物を、 黒珈琲を 用意しましょう。」 テュルクと近達グランの やり取りを拝し、 侍従が指を舞わして 茶器類を 操りはじめた。 「酒をと、云いたいがな。」 テュルクは、苦い笑いを 一瞬顔にのせて、 外し忘れていた 黒衣のマントを グランに渡して 気まず気に、 執務室の窓から 外へと 視線を流した。 部屋に入る前には 銀月色の髪や白鎧は 綺麗に 拭かれている。 カフカス王領国民は、 あまねく生まれながらにして 何らかの魔力を体に備えている。 成人前には 息をする様に魔法を行使するが、 持久量は 内包する魔力量による。 個人差と、発動時間差がある 魔力を魔石に貯めて応用活用する そんな発案をしたのが、 魔力を持たない、マイケルだ。 『ガタガタガタガタガタガタタ』 「今日は 地の揺れが多いですね」 近達グランが、 ふと窓から視線を戻して、 侍従が淹れた、黒珈琲を テュルクが口にする前に 試し飲んだ。 「さして変わらん、、だろ。」 グランの合図で、テュルクが 芳ばしさを味わう。 ウーリューウ藩島の海底は、 天然ガスを含んだ水質で 砂洲が海岸を 膨大な時間をかけて 飲み込みつつある。 神話の時代には 藩島面積は、今の3倍の大きさが あったらしいが、 それも千もの年月前の話。 当時の都市機能が、 干潮時には一部現れ、 尚 沈んだ部分は、 今もトレジャーハンターが 物品や石引き揚げをして 小銭稼ぎをする。 そんなわけで、 目にも見えない単位で、 少しずつ揺れと共に藩島は 現在も 地盤沈下は しているのだが。 「まさか、海に沈んだ場所に、 魔法を充たせる石が 採れる なんて考察は、魔法を 持たない者ならでは でしょうね。あ、すいません」 ・・・・・。 グランが、余計な事を 口走ったと、焦るのをテュルクは、受け流した。 『ガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーン 未だ、外では鐘が鳴る。 グランは、 口に両手を塞ぎ当てて、 体ごと 窓に移動して 逃げた。 その窓のすぐ外には 海神ワーフ・エリベスの像が配置 されている。 藩島を守る、 海神ワーフ・エリベス。 この像を島中に多く設置する 政策をしたのもマイケルだった。 地盤沈下する藩島が、 大地震で、大きく地殻変動する 時には緊急として、 海神ワーフ・エリベス像が 赤くなる。 だから、 「テ、テュルク、様!」 急に窓から 外を見ていたグランが 焦りながら、主 テュルクの 名を呼ぶ。 「ワーフ・エリベスの像、が!」 何故か、発光してます!! グランの叫びに、テュルクが 窓へ飛び付いて!窓を開口する。 執務室の窓脇にも配置された 海神ワーフ・エリベス像が、 確かに、 白く発光している、だとっ!! 身を乗り出した テュルクの目に映る 白い光。 間違いなく 像の異常発光。 『ガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーン 開口した窓 鐘の大音声に、合わせるが如く 『ガタガタガタガタガタガタタ』 揺れる島の 振動が 肌に伝わる。 侍従も我を忘れて、 主と近達の元へと大きく開かれた窓に寄って佇ずむ。 「まさか、、宰相補佐女官様の 刑に、、不手際とか、、」 極僅かな音で、侍従の喉から そんな喘ぎが 外の風に洩れた 時、 「テュルク様っ!!島中の ワーフ・エリベス像が 発光して いるとの報告と!潮が、、! 恐ろしい勢いで 潮が引いており 海中都市部が顕にとも報告が!」 宰相カハラが 書類をテュルクに 飛ばしながら、脱兎の如く 駆け込んで来た。 「カハラ!!最展望に上がる! 弔いの鐘が間は、魔法行使は 基本出来ぬ。故に 直ちに 翼龍隊を翔ばして藩島俯瞰 させろ!!展望にて指揮だ!」 窓から命ずるテュルクの背後に みるみる大きな影が近づいて 窓一杯に翼を持つ龍が一匹姿を 見せた。 「テュルク様!!海が、乾上がっ てございます!もしや、津波! 海底隆起やもしれません!」 逸速く見廻りの翼龍隊が、 島の異常に気が付いたのだろう 緊急時の直参に 執務室窓へ 翔んでの 矢継ぎ早の 報告。 「海底隆起だと?!」 この一言にテュルクの体躯、 宰相カハラの脳天が激震する。 「覇っ! 藩島中に配した発光する エリベス像より、今しがた温水 が噴出したとも、支翼龍隊より 知らせも ございます!!」 何っ?!! 火山は無いウーリューウ藩島。 噴火の可能性は無いが、 天然ガスを内包する 砂洲地質だ。 「報告、受け取る!直ちに最展望 へ我も上がる!翼龍隊長を展望 へ!カハラ結界魔導師も呼べ。」 近達グラムが、黒衣のマントを テュルクに着せれば、 侍従が最展望への通路鍵を解錠。 宰相カハラが 「テュルク様!結界魔導師を全員 招集するのですか?!それは!」 「巨大津波、もしくは、海底隆起 による、藩島瓦解を鑑み、」 藩島結界を 地空共々に、最大固定させる、 『ガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーン 大音声の響きに鼓膜が 打たれながら テュルクがカハラに 激命を飛ばした瞬間、 執務室の窓脇に配した 海神ワーフ・エリベス像から、 温水が太柱になって 激噴した。 『唖、唖、お前が、消滅した 世界さえ、 崩れて行くのか、 消失 に 嘆く 暇も 無い 早さで 』 王将軍 テュルク・ラゥ・カフカス 虚空に騰がる 柱の温水に身を渚打たれ 己が刃が また塗れた事に 再び心、抉られたか?
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