隣に立つ条件は手に届かなくて

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隣に立つ条件は手に届かなくて

「テュルク様、、?!海が、、」 最展望に登って 抜ける虚空の風に、 各々が髪を靡かせて 見つめる先。 「本当に、隆起しているか、 津波の前兆か、、だな。」 赤髪を震わせ、グランは固まり、 テュルクは 冷静に スコープを 覗きながら、呟く。 本来なら 白い砂浜が光る海岸線に 砂止めの木々、 干潮時に現れる 都市を回遊する ゴンドラが藩島を囲み 海の青と、木々や船色が美しい コントラストを見せている が、 「こんなに海中都市が 出ているのは、前宰相の父も 見たことなきはず!これでは あまりにも 無防備で危険と、」 宰相のカハラさえも、 口元を戦慄つかせ テュルクに 判断を仰ぐ。 「この状況に乗じて、藩島、いや 王領に仕掛ける 不埒者が 沸き上がっても 不思議はない」 ウーリューウ藩島は、 外洋国 と内陸を繋ぐ海道の 国際関所でもある。 そして今まさに 藩島は周囲を囲む海中都市が 干上がり現れ、 方々から 温水柱が 煙と噴出していた。 外洋から見ても、藩島の異常は 察知されかねない。 テュルクも それを忘れるはずなく 「ザード。ザード魔導師を スュカ嬢の元より召集せよ!」 海を見据えたまま、テュルクが 口にすると 「御身のそばに、テュルク様。」 最展望入り口から 鈴音が如く声と共に 薄桃プラチナ色を煌めかせ 波うつ髪を 風に広げた、大公令嬢スュカが 優国魔導師ザードを 後ろに、 テュルクの前に 参じた。 「スュカ嬢、此のような場所に 貴方が上がるものではない。 すぐに城内、『守護の間』に 戻り、侍女警護をつけるよう」 突如現れた2人に、 テュルクは冷淡ともとれる 言葉を投げるが、 そんな テュルクの鋭い眼差しを、 モノともせず、 「テュルク様は、マイケルが 相手ならば其の様なことは きっと仰らないのでしょうね。」 スュカは 毅然と言い返す。 「スュカ嬢は、大公が令嬢。 御身は重要しかるべし、城にて 護るのは当然であろう?それに、 マイケルは 女官、いや斬首人だ」 伏し目がちに 答えたテュルクの 言葉に、 スュカの両目が蒼白にして 見開いた。 「先からの弔い鐘はマイケル!」 何故ですの?、 それは、、 スュカの口に昇る テュルクへの 疑問を 「地下獄卒宮にて、、 我が、、 斬り、消滅させた 」 テュルク本人が 止める様に 答えて、 魔導師ザードに向き合うと 「カフカス王領国、 最優位魔導師ザードに、 結界魔法行使の陣頭指揮を 命ずる。 藩島内の魔導師を配置につけ、 地空結界を直ちに行え!!」 漆黒髪にフードを纏う 後ろ下げの頭に、 徐に片手をかざして テュルク自らの力を分与えた。 魔導師ザードの漆黒の瞳が、 虹色に変化する。 多大な魔力保有を 表す黒眼を さらに越える虹眼。 魔力分配された量がいかほどか? カハラやグランにも解り 背筋が震えた。 「こんな日がくるなんて、」 グランが信じられないと テュルクとザードを見つめ 思わず、 藩島の終わりを疑ってしまう。 魔導師ザードは、 人成らざる雰囲気を新たに 漂わせながら、 命を遂行するため スュカと共に展望から一礼を してテュルク達の前から 去る。 「テュルク様、魔導師達の移動を 翼龍隊に命ずるで 良いですか。」 宰相カハラの指は、 そう言いながらも舞い動き 指令を飛ばしている。 テュルクは 頷き、支流の翼龍隊を 外洋偵察に放つ様 カハラに追加した。 「地空結界が成されば、 直ぐに 温水噴出が凍結して、 成功が判る。そうすれば、 外洋からも一切侵入出来ん。」 それまで、何とか保ってくれ。 「津波にしても、地殻変動に しても、、外敵にしても、 三つ巴の崩壊シナリオ阻止て、」 マイケルは、 もしかして 判っていたので しょうか、、 グランが思わずポツリと 呟きハッと、 慌てて 口に両手を当てる。 「マイケルの政策が無ければ 我々は終わっていましたね。」 宰相らしくなく、 容易にそんな物騒な台詞を カハラは吐いた。 本来、地空結界という 大魔法の行使は、緻密繊細な 魔法陣で行使できる。 しかし、繊細ゆえに書き上げは 1人の魔導師による過酷さ。 カフカス王領国の国民はあまねく 魔力を体内に保有するが、 性質や、保有量、持続は 個体差がある。 その量は基本上位貴族は 数、量が多くなるが故に貴族。 王族は更に上回る。 自然、 大型魔法陣の発動は 保有訓練した魔導師や、 王公貴族ぐらいしか発動条件が 揃わない。 そして従来は陣を描いての発動は 1人で担う事になり、 それは 国や民への 生け贄になるべく大型魔法を 意味する。 「マイケルの発案と策は、 我々王族や貴族を救うものに なった。永遠に、子孫永劫だ。」 まだ、温水の噴出は止まらない。 テュルクは、覗いていた スコープを外して カハラに答える 「魔充石の発案で、ふだんから 魔力の保管ができて、それを 税として扱うなんて、始めは 驚きましたよね!なぜか、」 合理的で、マイケルらしいです。 と、グランが笑う。 その応用で、 藩島中に配した 海神ワーフ・エリベス像を 媒体に、 魔充石の魔力を 魔導師の魔力に変換して、 1人での行使ではなく、 登録魔導師の 同時配置で、 大型魔法を可能にする。 マイケルが議会に出した 政策は、あまりの画期さで、 「あの時の議会は、正に独壇場。 多いに見もので、語り草だよ」 カハラは苦笑いをして、 グランがつい 「それなら、彼女は聖女ですよ」 と、言うのを また カハラが肘でつついて 「もし、例えば 聖女なら、」 元自分の補佐をしていた 平民出身の女官を思いだしたか カハラは口を嗣ぐんだ。 そんな2人の言葉を風に流し、 テュルクは かつて マイケルが テュルクに 告げた想いの言葉を頭に浮かべた 『わたし、魔力を持たない女です この国を支え、助けるのは これからは 民1人でも 出来る。 その国で、わたしだけが、 それが出来ない。 いつか、必ず それを身に沁みる 日がくるなら、わたしは、、』 貴方の隣に、 立っていられない。 テュルクは 頭を振って 「マイケルは、斬り消えたのだ」 カハラとグランに 何の色も乗せない声で 告げた。 現に、スュカを筆頭にテュルクの 妃候補達は、多量の魔力を有し、 国位魔導師も彼女達の門閥貴族に 組する子息子女。 だからこそ、 最優国魔導師ザードが親族の スュカが筆頭妃候補なのだ。 もちろん大公令嬢である事も 理由ではある。 それさえ、 いかに魔法保有の多い血筋かを 示しているのだ。 「 、もし、あの時 それでも マイケルを この腕に していれば、 この瞬間、我は、、きっと いや、マイケルも、、 、 、 後悔していた。」 国と、恋。 想うと、今も 答えを出したく なくて、喉から 締め付けられる。 テュルクは、また スコープを目に当てて、 島の ワーフ・エリベス像をみる。
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