よくあるシーンでいきなりクライマックス

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よくあるシーンでいきなりクライマックス

「ナイーケ・ルゥ・ヤァングア嬢! お前は一体何を企んでいる!!大公令嬢への不敬罪で、地下牢に繋がれているはずの お前が、地下牢の最奥で 古代魔法陣を発動させるとは何をするつもりだ!!我自ら、再び拘束する!」  そう言いながら、テュルク王将軍は銀月色の髪を 颯爽と なびかせ、マイケルの白い首筋に 研ぎ澄ました白い刃を当てる。  テュルク・ラゥ・カフカス。 (あー、本当に好きになりかけていたんだけどなあ、、)  ナイケルは当てられた白い刃の冷たい感触と、目の前に相対する冬の月が如くに冴えた瞳の冷たさを、どこか他人事に思うと、視線を地下牢の床に落とた。  同時に、自分の首に、押し付けられた その白い刃を両の手で そっと持つ。 (もう、丁度いいや。)  投げやりにナイケルが思っていたが、片やテュルク。 (当てられた刃を押しやって尚この女は、己が腕枷から逃げるつもりなのか?そうは させるか!)  と、テュルクは刃を持つ利き腕に力を入れる。同時に、 「ごめんな、さ、い。」  テュルクの腕枷の中から、ナイケルの吐息がテュルクの耳を撫で、ナイケルの瞳に一瞬の光が宿った。  とたん、テュルクがハッキリと感じていた己が手の反発がフッと急に解け、テュルクの白い刃の切っ先から真っ赤な鮮血の飛沫が飛んだ。  テュルクが見れば、ナイケルのうっとりとした様な表情が声に成らない言葉を 語っている。  ナイケルは、理解しつつあった。 (ああ、好きかもしれない人の刃に、薙ぎ斬られた この稀有な感じ。)  そしてナイケルは、自分が『何』をやってきたのか、、深淵に落ちる刹那考える。 (もしかしたら、このままこの銀月の髪を持つ王将軍に斬首の介添えまで、されるのだろうか?それは悲しーな。)  つらつら走馬灯を見そうなナイケルは、目を見開き、何かを叫ぶテュルクの様子をやはり他人事の様に 眺め、テュルクに片手をフルフルと差し出し、  そのまま暗い処へ意識を 落とした。  ナイーケ・ルゥ・ヤァング嬢。  推定22才、カフカス王領国 ウーリューウ藩島城にて 王将軍自らの討伐により消滅。  ウーリューウ藩島に於ける、改革を推進した功績から宰相補佐女官の役につき、テュルク王将軍の寵愛を受けた元平民は、不敬罪の末 獄中にて 討伐されたと、カフカス王領国史実に残された。 (って!これ、あんまりじゃない?!全然、報われなーい!!馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬 鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!!!)  ナイケルは、魂の深淵に落ちながら、思いっきり 罵倒した。 (誰にか、わかんない!けどねー!!Down down, Down downって、どこまで意識落ちるのーーーー!)
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