白銀の魔法使い 惨の一

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ

白銀の魔法使い 惨の一

 わたしの名前は明野リン。十歳。世界で十二人しか存在していない始祖の魔法使い家の一つ『三光家』の魔法使いだ。職業は魔障探偵なんかをやっている。  魔障探偵って?  魔障事件を専門に取り扱う探偵のこと。  魔障ってなにかって?  ああ、そこからか。仕方ない、説明するよ。  魔障とは怪異が引き起こす事件のこと。仏教用語で悪魔の障害って意味もある。まさしくそれ。つまりは悪魔や妖怪、幽霊なんかが起こすちょっと困った事件さ。どのくらい困った事件かと聞かれれば軽く人死にが出るくらいかな?  どのくらいの犠牲者が出るのかって?  そりゃ、ピンキリだよ。一人の時もあれば百人や千人くらい死者がでることもあるし、たまに国が一つ滅んじゃうときだってある。  太古の昔、たった一つの魔障事件のおかげで滅んだ国は東西南北様々。  魔王が現れると世界を救うために勇者が現れる。勇者が魔王を倒してハッピーエンドなんて結末は夢物語だけ。魔障に対抗する術を編み出すべく、先人たちがたゆまぬ努力と研鑽を続けてきた結果、わたしみたいな魔法使いなんて存在が誕生したのだ。  魔障は普通の人間には見えない。だから理解不能な凶悪事件が起こっても大抵は犯人不明の迷宮入り事件となって放置されてしまう。誰もが妖怪や悪魔などの存在を信じてはいないからだ。  そのために、わたしは、魔障探偵は存在する。  まぁ、ほんのちょっぴりお高い依頼料を見返りにだけれども、ね。  どのくらいのお金が必要かって?  そだね、新車一台分くらいが基本料金かなぁ?  高すぎる? まさか。これでも安すぎるくらいさ。  考えてもみて。いたいけな美少女が猛獣よりも凶暴な妖怪やら悪魔と命をかけて戦うんだよ?   例えば街中に怪異に取り憑かれた熊が現れるとする。それを十歳のただの美少女魔法使いが退治する光景を想像してみなさいな。  え? 爆裂魔法の一発で簡単に倒してしまった、だって?  いや、わたし、爆裂魔法とか使えないから。方法はともかく、いたいけな美少女が凶暴な熊を倒して人々を救ったんだ。凄いでしょう。なんだって? 熊が出たら警察と猟友会に任せればいいでしょって……まぁ、そうだけれども、その熊は猟友会でも倒せないくらい滅茶苦茶大きな熊だったんだよ。うん、確かにそうだった。あー、うっさい。ごめんね、熊に例えたわたしが悪うございました。怪獣でもエイリアンでもなんでもいいよ。とにかく、あなたにも警察にも猟友会にも自衛隊でも倒せない奴をわたしは倒すことが出来るんだよ。だから、料金が多少割高になるのは仕方がないことなの。さ、この話は終わりだね。  ま、それはさておき。  これから話す事件は恐らくわたしが取り扱った事件のなかでも上から四番、いえ、二番目くらいにはやっかいな事件だったもの。  何故なら、命をかけるどころか本当に死んでしまったからだ。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!