白銀の魔法使い 惨の三

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白銀の魔法使い 惨の三

 一応、彼、拓勇アズマの紹介をしておこう。本当は面倒なんだけれども仕方がない。  年齢は35歳。独身。ついでに童貞。中身はオタク。職業は魔法使い捜査官。  そして、一応、わたしの保護者なんかをやっている。血縁はもちろんない。  いつもぼさぼさな短い髪。顎に蓄えられた無精髭。中肉中背。猫背でいつも羽織っている黒のコートはボロボロで貧乏ったらしいことこの上ない。外見を見ただけで、こいつ、女に縁のない人生送ってきたんだろうな感が半端ない。実際にこの年齢まで『接吻』ですら未経験らしい。流石は歴戦の童貞である。  アズマの口癖は「孤独死上等」であるから、ある意味悟りを開いているのだろう。潔いところは尊敬に値すると本心から思う。  女性から生ごみ以下の扱いを受け続けている彼だけど、実はわたしはこの男に対して嫌悪感を抱いたことがない。その逆。本人には内緒だけどね。  アズマがいつも浮かべている締まりのないへらへらとした笑顔は嫌いじゃなかった。  不思議と安心感があった。温もりも感じられた。  とある事件の末、わたしが本家の『三光家』を出るとき、真っ先に保護者を名乗り出たのもアズマだった。  三光家を捨て母方の『明野』の姓を名乗ることを決めた時もアズマだけは何も言わずに賛成してくれた。「リンちゃんの好きにしたらいいんだぜ」と頭を撫でてくれたときは口では「触るな、この変態」とか悪態をつきながらも本当は気持ちよくって、もっと撫でてもらいたかった。安心感がアズマの手から伝わってくるような感じがしたのだ。これも本人には内緒だね。  とにかく、見た目はアレだけれども、本当に優しくて安らげる人柄だと胸を張って断言しよう。どうして女性にもてないのか理解が出来ない。これほどの優良物件を野放しにしている世の独身女性は見る目がない。  え? それじゃ、自分がアズマのお嫁さんになればいいじゃないかって?  それは断る。生理的に、無理だ。無理無理無理無理無理無理無理無理。  少し話が逸れてしまったね。本筋に戻るとしようか。  さっきも云ったけれど、彼もまたわたしと同じように魔法使いなんかをやっている。  ただし、血統書のない野良の魔法使いではあるが。  詳しい内容は省略するれけれども、五年前、世界でとてつもなく大きな魔障事件が発生した。  通称『M事件』なんかと魔術師世界では云われている。  世界には始祖の魔法使い家と呼ばれる魔法使いが存在している。その数はたったの12人。わたしはそのうちの『三光家』の魔法使い。今はその名前は捨てちゃっているけれどもね。  それに対して魔術師の数は世界に10万人くらいはいるとされている。だから魔法使いはめちゃくちゃレアな存在と云える。  魔法使いと魔術師の違いはなにかって?  魔術師は人間が開発した技術である『魔術』を行使する者。  魔法使いとは『喪われた神々のテクノロジー』を行使する者とに分けられている。  わたしにもよくは分かっていないんだ。魔法使いの講義はこれで終了。さて、『M事件』の説明だったね。  五年前、世界中で起こった魔障事件。通称『M事件』。  それは簡単に云えばとある条件を満たした世界中の男性が、ある日突然、妊娠してしまって何万人規模という魔法使いが誕生してしまった事件のこと。  始祖の魔法使い家以外の魔法使いが誕生する確率は数百年に一人程度である、と云われていた魔術師世界の常識を覆す異常事態だったらしい。  残念ながら、魔法使いになれなかった哀れな者たちはお腹が爆発しちゃって、その後凶悪な魔障に変貌してしまったらしいから、相当数の犠牲者が出たと云われている。  その時、運良く魔法使いになって九死に一生を得たのがアズマだった。  話がよく分からないって? それはわたしもだよ。本当に長くなるからまた今度、今度ね。聞いてもあまり面白くない話だしね。  とにかく、その時、魔法使いになった彼らの共通点が一貫して三つほどあった。  一つは男性。  一つは満30歳であること。    そして最後に『童貞』であること。  この国には三十歳になるまで童貞を貫いた男性は魔法使いになれる、なんて都市伝説がある。  まさしくその都市伝説が悪夢となって現実のものとなった歴史的瞬間だった。  だから、それで魔法使いになった者たちのことを魔術師の世界では最大限の侮辱と軽蔑の意味合いを込めて『 (野良魔法使い) 』と呼ぶようになった。  何故なら、彼らMが引き起こす事件の大半は性犯罪だったからだ。  魔術師垂涎の魔法の力をあろうことか痴漢に使用するのだから、能力の無駄遣いが半端ないのである。  困ったことに、Mの力はとてつもなく強大なものだ。時間停止の魔法など平気で使う輩もいる。だから、並大抵の魔術師では歯が立たないのも事実。  Mが世界最強の痴漢生物とも呼ばれているのは無理からぬこと。  現在、世界ではその『M』関連の事件が災害レベルで頻発していて警察も魔導ギルドも四苦八苦の状況であることも付け加えておこう。  アズマは現在、『クソM野郎』とか『童貞野郎』などと魔術師たちに陰口をたたかれながらも、魔導ギルド日本支部において魔障事案やM事案を解決する特殊部隊に籍を置いている。  ついでに云っておくと、彼の二つ名は『百戦の魔法使い』である。  始祖の魔法使い家に匹敵するほどの実力を秘めているとされ、戦闘能力だけならば、恐らく世界最強、かもしれなかった。 「リンちゃん、どした? ぼーっとしちゃって」  あの後、わたしとアズマは現場近くの24時間営業の家系ラーメン屋にやって来ていた。向かい合わせのテーブル席について、あれこれと考えを巡らせているうちにぼーっと遠くを見ていたらしい。 「いや、ちょっと心の裡で『アズマのクソ童貞野郎』ってごちていただけ」 「ちょ、リンちゃん! そういうのは心の裡でだけごちてちょうだいな。おじさん、そういう冗談、めっさ傷つくんだからさ!」  アズマの使う魔法の源はトラウマだと聞いたことがある。  わたしたち始祖の魔法使いと違い、野良の魔法使いは術式も魔法陣も錬成せず、ただ感覚で魔法を発動する。火を思えば火を放ち、氷を思えば周囲を凍結させる。時間を停止したいと願えば簡単に時間を停止することが出来る。  もちろん、感覚で発動できるとはいえ、相応の代価を支払う必要がある。  アズマの支払う代価とは、魔法を発動するたびにトラウマを思い出さなければならないこと。そのトラウマの苦痛たるや。本人曰く。いっそ死んだ方がマシなレベル、らしい。  ちなみに、わたしの魔法の発動媒体はご存知のようにあやとりだ。  あやとりを使って魔法陣を構築し、様々な魔法を発動することが出来る。  いわゆる無詠唱魔法というやつだ。  魔術師や魔法使い同士の戦いにおいて、魔術や魔法の発動の速さはそのまま勝敗に直結する。  魔法陣を構築し、呪文詠唱を行って、それから魔力を込めて魔術や魔法を発動する。  しかし、わたしは面倒なすべての行程をあやとりで省略し、ほぼ一瞬で魔法を発動することが出来る。  魔法発動の速さだけなら、多分わたしは世界一だろうと自負している。  そして、それを可能にしているのがこの銀色のあやとり糸、名前を『銀后糸』という。普段はわたしの後ろ髪に寄生させていて24時間、常に魔力を吸わせ続けている。実はこの子、生きているのだ。魔導具というよりは魔導生物に近いかもしれない。  イメージ的にはとても人懐っこいミミズといった感じかな?   こいつはとても可愛いやつで、私のためなら危険を顧みずなんでもしてくれる。  ま、その代価として魔力を供給してやっているんだけれどもね。  もっと詳しく説明すると、銀后糸は三光家に代々受け継がれている魔導具で、三光家の正統伝承者にしか扱えない危険な代物。なにせ消費魔力が半端なく、普通の魔術師が使用しようものなら、一瞬で魔力はおろか生命力のすべてを吸い取られて即死してしまうだろう。  付け加えておくと、始祖の魔法使い家にはそれぞれ代々受け継がれている魔導具がある。  そのどれもが一歩使い方を誤れば世界を滅ぼしてしまう危険なもの、だとは魔術師や魔法使いの世界では有名な話だった。  あくまで噂だよ。そんなわけ、ないってばさ。    ……多分。  そうこうしているうちに、ラーメンが二つ運ばれてきた。  一つは普通の豚骨味噌ラーメン。  もう一つは豚骨辛味噌ネギラーメン、激辛マシ、味玉トッピング、油少なめ、味ネギトリプル乗せ。  それはもはやラーメンではなく単なる白髪ネギの塔であった。  ラーメンを運んできた店員のお兄さんが普通の味噌ラーメンをわたしの前に置こうとしたので、すかさず「それはこちらに」とアズマの方に促した。  店員のお兄さんは一瞬、マジか、って驚きの声を漏らしそうになると、白髪ネギタワーのどんぶりをわたしの前に置いた。  豚骨スープの香りが食欲を湧き立たせ、白髪ネギの神々しい煌めきがわたしを破顔させる。白髪ネギの麓で湧き出る真っ赤な泉はマグマの海を彷彿とさせた。これはもはやスープではなく唐辛子そのものであろう。  これをラーメンと呼んでよいものだろうか? どんぶりの中はネギと唐辛子の暴力によって支配された非情な世界。それには慈悲など微塵も存在してはいない。  だが、それでいい!!!  わたしは、無我夢中で白髪ネギを頬張る。いくら箸を進めても、未だに麺はおろかマグマのスープにすら辿り着かない。途中、味玉を頬張る。そして、再び白髪ネギを。そうこうしているうちにようやくマグマのスープが顔を見せた。レンゲで一口スープをすする。辛い! だが、辛味のなかにも甘みがあって美味い! 真っ赤に染まった太麺を手繰り上げると、わたしは一気にすすった。ほっぺを膨らませながら麺を咀嚼するいまのわたしの姿は、さながら餌を口の中に貯めこんだエゾリスのようだったに違いない。  でも、そんなことなどお構いなしに、わたしは次々と麺、スープ、麺、スープと無我夢中でどんぶりの中にあったものを喰らい尽くしていった。 「リンちゃん……ほんと、それ、好きだよねぇ。ていうか、もはやラーメンじゃなくってネギと唐辛子じゃなくね?」  呆れ、というよりは少し畏怖した様子でアズマは云った。 「ネギは万病を予防し、唐辛子はカプサイシンで肥満予防と血行をよくする効果がある。にんにくは精力増進、魔力回復にも効果的。ついでにがん予防にもなるしね。つまり、これは健康と栄養価の面でも理にかなった神の一杯というわけだよ」  わたしはどんぶりに残された最後のスープを飲み干すと、アズマに向かってこれ以上ないくらいのどや顔を決めて見せた。 「ちなみに、豚骨スープは男性のあれをビンビンにする効果があるらしいよ?」  わたしは心の裡で「あれというのがなんなのかはさっぱりだけれどもね」と付け加えた。  アズマはすすっていた麺を噴き出すと、ゴホゴホと咳き込む。 「マジで!? っていうか、リンちゃん、女の子がそういう下品なこと云っちゃめーでしょうが!!」 「下品ってなにが?」  アズマは言葉を詰まらせると「とにかくダメなんだからね」とそっぽを向いた。その頬が薄く紅潮していた。まるでツンデレ美少女キャラのようで気持ち悪いぞと思った。  こいつ、なんで顔を赤くしてんだろう??  まあいいや、とわたしは水を口に含んだ。 「ところで、今日の依頼はどんな感じだったん? たしか役所からの依頼だったよね?」  アズマは麺をすすりながら云う。 「別に。いつも通りさ。いつものようにひとを喰う魔障がいたんで銀糸で切り裂いて浄化しただけ。本当にしけた依頼だったよ。なんせ、ランクAの依頼で報酬がたった帯一本だったからね」  わたしの出した人差し指を見て、アズマの顔が驚嘆に満ち溢れる。 「帯一本って、それ、おじさんのお給料三か月分以上なんですけど???」 「バブルのときは良かったよ。どんな依頼でも帯三本は貰えたからね」 「いや、バブルなんてリンちゃん、まだ産まれてすらいないでしょうが。どこで覚えてきたの、それ」  わたしは軽く「スマホ」と返した。 「あ、でも、今日の魔障はいつもの悪霊とか妖怪の類じゃなくって鬼だったよ」  鬼、の単語がリンの口から洩れた瞬間、アズマは驚きのあまり戦慄いた。手元から箸がテーブルに滑り落ち、乾いた音が響き渡った。 「お、鬼だって!!?」  アズマは突然、驚いた声を上げると、立ち上がってそのむさくるしい顔をわたしの鼻先まで迫らせてきた。見ると鼻から太麺が一本飛び出ていた。 彼の声に驚いた周囲の客と店員さんが一斉に二人に目線を寄こす。  わたしは少し慌てながらも、大丈夫です、ごめんなさいアピールを周囲のひとたちに送った。  そんなわたしの懸命のフォローなどお構いなしに、アズマは更にまくし立ててきた。  飛散するアズマの唾を防ぐように、わたしは懸命に両手をアズマの顔の前にかざす。 「ダメじゃないか! そういうときはおじさんを呼ばないと!! 鬼なんて奴らはね、ひとを喰うこととあれのことしか考えていなんだからさ! なにかあったらどうするつもりだったんだい!?」 「あれってなにさ?」 「そりゃ、あれはあれだよ」  アズマは再び頬を薄く紅潮させて口籠った。視線をキョロキョロと宙に泳がせ、その姿はまるで挙動不審な変質者のようだった。  訝し気に首をひねった後、ピンとなにかが閃いて、わたしは、ふとあることを思い出した。 「ああ、種付けのことかい? そういえば鬼はメスならなんでも魔胎させてしまえるんだったっけね。でも、わたしが小鬼ごときに遅れをとるわけもあるまいし……って、おーい、アズマ。なにをそんなに顔を真っ赤にしているんだい?」  見ると、アズマは真っ赤に染まった顔を両手で覆い隠しながら長椅子に横たわっていた。ぷるぷると全身が小刻みに震えていた。いまのやりとりのなかで、どうしたらそういう状況になるんだろうか。皆目見当がつかない。 「リンちゃん、お願いします。これ以上、おじさんを翻弄しないでおくれ。そして、ちょっとの間だけそっとしておいてちょうだい」  はぁはぁ、とアズマの呼吸が少し荒ぶっていた。  なんのこっちゃ。  それが童貞ゆえの葛藤であることを、幼かったわたしは知る由もなかった。  食事を済ませた後、わたしたちはタクシーを拾って家路についた。  わたしたちの家は牧真琴市にある無人駅のすぐ近く。くたびれた二階建ての長屋がそれだ。  住居と魔障探偵の事務所を兼ねている。  いまにも崩れそうで、人間よりは地縛霊でも住んでいそうな香ばしいものを醸し出している。  アズマの給料でも、もう少しはマシな物件を選べたのだが、わたしたちはこの長屋を大層気に入っていた。  人も少なく辺鄙な場所だが、近所に大きめのスーパーもあれば飲食店(ラーメン屋!)も多数軒を連ねている。病院も内科、外科、小児科、歯科などが勢揃いしている。無人とはいえ駅もあるし移動に不自由さは感じない。生活するのに不便さがないのだ。  下手な都会より快適な生活を送れると断言できよう。  アズマにとっても、周囲に居酒屋が何軒もあるので、それがなによりの理由だった。  歩いて行ける居酒屋が家の周りに何軒もあることは、酒飲みにとっては天国のような場所なのらしい。  周辺は独特のコミュニティを形成していて、この町内でお互い顔を知らない者はいない。まるで、小家族の集合体と呼んでもいいくらいには皆仲が良い。  ちなみに、わたしは町内のお年寄り全員の共有『孫』なのらしい。  いつも美味しいおやつとかをご馳走になったりして可愛がってもらっていたりする。  町じたいは寂れてしまっているけれども、とっても温かい場所だと思う。  心の底から思うよ。わたしは本当にここが大好きなんだってね。  恥ずかしいから声には出して云わない。  お爺ちゃん、お婆ちゃんたちにも内緒だよ。  鍵を開けて玄関に入ると、アズマはあらかじめ自分で用意していたのだろうか。玄関先に置いてあった旅行鞄を手に取った。 「あれ? これから仕事なの?」 「そ。ちょっくら登別までね」  登別、という単語に反応し、わたしの脳裏に快楽と幸福のイメージが膨らんだ。  潤沢な温泉。豪華なバイキング。名物の地獄ラーメンに閻魔焼きそば。  ああ、考えただけでとろけてしまいそうになる。  そんな天国のような幸せを独り占めにしようとするアズマに対して、わたしは心の底から激しい怒りを感じた。 「温泉? 温泉に行くのね!? 地獄谷温泉、美味しいホテルのバイキング。地獄ラーメンに閻魔焼きそば……おい、わたしも連れてけ!! ずっこいぞ!!」  わたしはほっぺをぷくーっと膨らませてアズマに抗議する。 「仕事だよ、しーごーと! 本当は昼には行こうかと思ってたんだけどよ、リンちゃんが心配で半日だけ休暇もらっておいたんだ」  アズマはいつもそうだ。いくら仕事が忙しくてもわたしを最優先に考えてくれる。  今日だって、大丈夫だから絶対に仕事場に来るな、と釘を刺していたにもかかわらずちゃんと外で待機してくれていた。現場が市内のときはいつもそう。可能な限りわたしの世話を全力で焼いてくれている。  正直、それが鬱陶しいと思うことはある。けど、それが心地よいと感じるのも事実。 「なんかよ、最近、登別でやたらと魔障事案が発生しまくりなんだってよ。特に鬼が出まくりらしいぜ」 「まぁ、登別といえば地獄谷だもの。鬼はつきものじゃない?」 「冗談じゃなくってね、真面目にやばいらしいんだわ。今も支部の魔術師部隊が一個小隊ほど調査にでばっているって話だし。それで現場に一番近いオレに白羽の矢が立ったちゅうわけ。だから断じて遊びで温泉地にいくわけではございません!」 「でも、どうせ温泉に浸かるのでしょう??」  わたしは妬ましさを全開にアズマをジッと凝視した。  連れてけ連れてけ連れてけ、そんで温泉、温泉、温泉、地獄ラーメン、閻魔焼きそば。  アズマは深く嘆息すると、根負けしたようで泣きそうな顔を浮かべて云った。 「分かった。じゃあ、今度、今度な。次回休みとって温泉旅行に連れてってやるよ」  わたしは無表情のまま、すかさずガッツポーズを決める。 「ただし、今回のお仕事が片付いたらな。っつうか、リンちゃん、君、おじさんより稼ぎまくっているのに、どうしてそんなにがめついの????」  わたしはその言葉の意味が理解できず、一瞬、キョトンと呆けた顔を浮かべた。  そして「だってわたし、子供だもん。楽しみにしてるよ、アーズーマ!」と笑って見せたのであった。 『しかし、そのとき、わたしはその日が永遠に訪れないことを知らなかったんだ』
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