欲しいものをくれない貴方

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欲しいものをくれない貴方

一年目 「お付き合いして下さい」 二年目 「一緒に居てくれませんか」 三年目 「食事を作らせて?」 四年目 「結婚しようかなぁ。」 五年目 「そろそろいいんじゃない?」 六年目 「一緒にいれるだけでいいから。」 七年目 「本気なの。」 八年目 「一周まわって好きになった?」 九年目 「冥土の土産だと思って。ね?」 十年目 「もう、諦めてそばにおいて。」 奥さんを亡くした貴方に会ってから十年。 返事は毎年「ありがとう。僕には勿体無いよ。」 違うの。 私の欲しいものはそれじゃない。 年齢なんて、関係無い。 「僕はもうすぐお迎えが来るから。」 それでもいいって言ったでしょう? 嫌なら、どうして突き放してくれないの。 でも「貴方の妻であった」という「(あかし)」もくれないの。 私以外の人は皆、「いい人だったよね」 そう、言うわ。 きっとね。 私が喪主で 私達の関係が何物でも無くて 私が貴方を愛してたとしても。 私が貴方の元に行ったら その時、本当の気持ちを教えてね。 そう、約束してくれたら「いい人ですよね」って 言われても黙っていてあげる。 だから来年も言わせてください。 返事は「ありがとう」で いいから。
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