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⑥
金曜日、深夜、大学の休憩スペース。いつものように師匠と将棋を指す。
師匠と僕が将棋を指すときは、いつも木の盤と木の駒を使う。木特有の優しい音が、静かな休憩スペースに響く。
パチリ・・・パチリ・・・パチリ・・・キュー
・・・・・・キュー?
「・・・お腹、空いたのかい?」
師匠が笑いをこらえながら僕を見る。師匠の言葉を聞いて、先ほどの音が僕のお腹が鳴った音であったことに気が付く。顔の温度がどんどん上がるのが分かった。きっと、僕の今の顔は、トマトのように真っ赤になっていることだろう。
「・・・聞かなかったことにしてください・・・。」
「・・・遠慮しておくよ。」
笑いをこらえながら、残酷な言葉を口にする師匠。ついには、こらえきれなくなったのだろう。「クックック」と声を漏らしていた。
深夜、大学の休憩スペースに、僕たちの話し声が穏やかに響いていた。
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