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 バキッ!  キャンバスを切り裂くことにしか頭になかった私はカッターの刃が折れる音でようやく手を止めた。  我に返った私の目の前にあったのはボロボロになった街の姿。完成させるはずの絵だったものだ。 「くっ……」  私は自責の念にかられながら目の前のキャンバスに頭を突き立てうなだれた。  ガタッガタバキッ。  しまった。いや、冷静に考えればそうなるよね。  私がキャンバスに体重をかけた瞬間、キャンバススタンドが大勢を崩し、反動で私は床に倒れこんだ。よく見てみると、スタンドの脚が折れてしまっている。いくらキャンバススタンドに支えられているとはいえ、何も考えずに高校生並みの体重をかければこうなるのは阿呆でもわかるだろう。 「ふっ……ははっ……ははははは。ははっ……」  天井を見上げた私は、あまりに滑稽な自分の姿に嘲笑(ちょうしょう)を隠せなかった。
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