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     〇  いつからだったか、絵を描き上げられなくなったのは。  いつからだったか、何事にもやる気がでなくなったのは。  あっいや、それは生まれつきだ。   私は昔から物事に対して興味を示さない人間だった。  幼稚園に入ったころ、周りの友達はヒーローごっこや砂遊びをしていた。そんなとき、私はベンチで座って本を読んだり、ぼーっと空を見ていたりするのが好きだった。  小学校に入ったころ、周りの友達はサッカーやドッチボールをしていた。そんなとき、私は教室で本を読んだり、寝ていたりするほうが好きだった。  しかし、私は決して孤立していたわけじゃない。  普通に友達はいて、普通に話せていて。私はいたって普通の生活ができていたと思う。  それは私が自分のことを客観的に見るのが得意だから。私は自分がそういうやる気の出せない人間なんだと理解していたから。  そんな私に転機が起こったのは中学校に入学してすぐ。 「よろしく! 啓成(けいせい)!」  彼と私が出会ったこと。それが、私が絵を描くことになったきっかけであり、最悪の結末への始まりであった。      〇
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