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     〇  道具を片付け、清掃も済ませ、全てが終わったときにはすでに日が落ちていた。やる気に満ち満ちた運動部も終礼を行っている。 『あざっしたぁぁぁ!』  極端に簡略化された言葉が窓の外から聞こえる。時刻はすでに六時を回っている。  私は黒のショルダーバックを肩に回し、美術室を出た。もちろん、電気を消すことと戸締りも忘れずに。  カギのついた金属製の輪っかに指を入れて、それをくるくると回しながら、私は薄暗い廊下を歩く。  美術室は別館の四階に位置する。できることならこのまま外に出て帰ってしまいたいところだが、放課後に美術室を使ったものはそのカギを本館二階の職員室にまで返さなくてはいけない。 「地味に遠いのが辛い……」  私は誰もいない廊下でそうつぶやいた。  階段を降り、連絡橋を渡って本館へ。そしてまたしばらく廊下を歩いたあと階段を降り、また少し歩く。  毎度思うことだが、きっと生徒のアクセスが多いであろう職員室の近くになぜ、連絡橋をかけておかなかったのか。もしくはなぜ、連絡橋の近くに職員室を置こうとしなかったのか。  私は苦言(くげん)(てい)したい。
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