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教室を後にした勇気はこれからが心配になりエリシアに声をかけた。
「なぁ、俺これからどうなるんだ?学校や親にも一言言いたいし…」
「それは心配いらないよぉ!」
歩いていたエレシアが急に振り返り顔を覗き込んできた。
大人の姿になってからは勇気の身長よりも高くなっていた。
「ボクがぁ、あの世界から君の存在を消したからねぇ。」
「は?消した?」
説明をしたでもなく、存在を消したと言われ、勇気は戸惑っていた。
そんなことがまずできるはずがないと。
そんな勇気の気持ちを見透かしてか、エレシアはつけ加える。
「君がボクを最初に見た時の魔法覚えてるぅ?」
勇気は子どもの姿のエレシアが、女性の近くに突っ込んでいた時のこと思い出していた。
「あの時使った魔法はチェックメイト。あの世界から物や人の形を消すこともできるし、存在や時間。実態がないものも消すことができるんだよねぇ。」
「まさか!」
その言葉を聞き、理解した勇気にエレシアは、
「そう、お察しの通り、君の存在をあの世界から抹消したって話ぃ。」
勇気は言葉を失った。
絶望した。
嘘だと言って欲しかった。
そんなあっさり勇気の存在が消されたことに対し勇気は、
「あっさり俺の生きている価値が消えた…」
それを聞いたエレシアは笑いながら
「君は面白いことを言うねぇ!君の生きている価値なんてもともとなんにもなかっただろぉ?」
勇気は何も返せなかった。
平凡な人生で、夢なんて何も無かった。
でも…
「…母さんに、母さんに別れを言いたい。」
勇気は振り絞る声でエレシアに訴えた。
エレシアは溜息をつき、
「いいよぉ。でも、絶対に帰りたいなんて言わないでよぉ。そんな権利、魔法の素質がある君には権利がないんだからねぇ。言ったら君はドヒャーンだからね?」
最後のドヒャーンは想像したくないが、勇気は頷く。
エレシアは勇気の肩に触り呪文を唱えた。
「テレポーテーション。」
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