2人が本棚に入れています
本棚に追加
一気に家の前まで来た勇気とエレシア。
そこにあった家はいつも通りの普通の一軒家だった。
勇気はインターホンを押そうとした時、横にある庭から女性が出てきた。
勇気の母親だ。
「母さん…」
今朝別れたばかりなのに、どこか悲しさが込み上げてきた。
さらに追い打ちをかけるように母親が声をかけた。
「えっと。どなたですか?うちに何か用ですか?」
「…っ!」
本当に勇気のことを忘れてしまっていた。
その事実にただただ歯ぎしりする勇気。
でもここで変な対応をしてしまうと通報される可能性があると考え、勇気は探りを入れてみた。
「あの、ここは、田中勇気さんのお宅ですか?」
母親はすぐに答えた。
「いいえ、違いますけど。」
勇気は絶望した。
やはり自分のことを思い出す気配もなかった。
どこかにピースを当てはめれば自分をまた認識してくれると思ったが、盤そのものが消されていた。
「あのー。どこかとお間違いなさっているのでは?」
優しい口調で、聞いてくる母に、涙をこらえ、勇気は早口で言った。
「ごめんなさい。間違えたみたいです…さようなら。」
勇気は小走りでその場を後にした。
エレシアはまた子どもの姿に戻っている。
足を止め、息を整えている勇気にエレシアは声をかけた。
「もし君があの学校のトップになって、魔法を消してくれたら記憶と時間を戻してあげる。それまでの辛抱だよ?頑張ってくれるかな?」
勇気はどうすればいいかわからなかった。
しかし、とにかくやらなければいけないことはわかった。
勇気はエレシアに向き直り涙を拭き、
「やってやるよ!俺がトップになって、魔法をこの世界から、全世界から消してやる!」
そういった勇気をどこか面白そうに愛おしそうに見つめるエレシア。
「それじゃあ戻ろうか?僕たちの居場所へ!」
そう言うと、この世界からは遥かに離れたもうひとつの世界へ空間移動した。
最初のコメントを投稿しよう!