第6話 魔力所持者

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「それを聞いたり見た人は10人を自然の守護者と崇めた。難病にかかった子供たちが、一気に上位魔法士になった。10人の子供は自然を守るために、数々のことを果たしてきた。でも。」 「美味しい!」 「…」 初めて飲んだ勇気は歓喜の声を上げ、あっという間に飲み干す。 それをエレシアは何か言いたげに見ていた。 「勇気ぃ。話ぃ、聞いてるぅ?」 「ああ、聞いてるよ。」 「…君は案外では無いよねぇ。」 エレシアは軽く咳払いをして、話の続きを始めた。 「でも、そんな膨大な力を得た守護者はいつしか野心を抱くようになった。4人の守護者は世界征服を企むようになり、やがてそれは守護者内で対立を産んだ。世界征服を企む守護者を止めるべく、村人たちは立ち上がった。しかし、守護者に生身の魔力を所持していない人が勝てるわけがなく。守護者と守護者の全面戦争になった。野心を企む守護者を魔戒の守護者。世界を守ろうとする守護者は天聖の守護者と呼ばれた。魔戒の守護者がおされ、天聖の守護者が有利と見えた時、天聖の守護者の1人が裏切り、大打撃を受けた。このままでは世界が危ないと悟った天聖の守護者は自らの命と引き換えに魔戒の守護者の封印を実行した。これは上位魔法士の中でも莫大な魔力が無いと発動できない魔法。でも、守護者同士、互角な魔力での封印は厳しかった。そこである条件をつけた。記憶を失った状態で転生させること。記憶を失った魔戒の守護者は、自分の前世を知る前に寿命を迎え死ぬ。天聖の守護者は、魔戒の守護者1人が転生するごとに記憶を持った状態で、転生した魔戒の守護者を監視する。それが。無事に魔戒の守護者を封印できた世界は、同時に天聖の守護者を失った。人々は世界を4つに分け、魔力を道具に流す魔道具を製作し、魔戒の守護者が記憶を取り戻しても対抗ができるように対策をした。それから5000年たっても、何も起きなかった。今も皆さんは平和に暮らしています。おしまい。」 「…ちょっと待って、記憶ないのに、どうやって見つけて監視するの?」 「いい質問だねぇ勇気。天聖の守護者は魔戒の守護者の隠れた魔力を感知することができるんだぁ。そして、天聖の守護者は自分の正体を誰にも言ってはいけない。自分がいるってことは、魔戒の守護者も転生してるってことだからねぇ。」 「…あれ、待って、それって。」 「ああ、やっと気づいたねえ。」 先程のエレシアの話にどこか引っ掛かりを覚えていた勇気は顔を真っ青にした。 「それって…」 「そう、君は記憶を失った魔力所持者。魔戒の守護者の1人だよぉ。」 「…」 勇気は戸惑った。今まで以上に戸惑った。 ということは… 「君は初めましてだったけど、ボクにとっては2回目の出会いなんだよねぇ。僕はテレシア・エルブレンドでもあり、天聖の守護者の一人だよぉ。そして君は、平凡な男子高校生 田中勇気であり、魔戒の守護者の1人だよ。」 勇気はこの状況に失神しそうだった。
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