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 手を貸しましょうか、という親衛隊長の声にそっと微笑む。ありがとうと頷くと、彼はいいえと首を振った。差し出された腕に手を重ねると、思っていたよりも筋肉質だったことに驚く。 「意外ですか」 「っえ、」 「そんな顔してました」 「そう?」  こんな見かけでも鍛えてますからね、とどこか誇らしげな隊長。あなたを守れるように、と続いた言葉に、どんな顔をすればいいのか分からず聞こえないフリをした。カツン。逸らした目の先で、杖の床を叩く音がする。右手で杖をつき、左足を引き寄せる。俺のゆっくりとした歩みに合わせ、腕を差しだす彼も歩を進めた。  ざわ、とさざめく周囲に、足元を見ていた目を上げる。 「生徒会長」  呟く声に内心首肯する。星森学園、生徒会長……城戸(きど)与一(よいち)。生真面目で、融通の利かない男。俺の仕事のターゲット。  杖で床を叩くと、カツンという音に混じって金属の高い音が微かに聞こえた。愛刀の存在を確認した俺は、視線をターゲットに戻す。 「東雲(しののめ)」  近寄る城戸に左手を上げる。 「今から昼か」 「ああ。一緒に行くか」 「ん、じゃあそうしようかな」  城戸が代わる、と腕を差しだすと、隊長は会釈をし立ち去った。一言断り、腕を借りる。このまま杖を振り刀で喉笛を掻っ切ってしまえば。じっと見つめる視線に気付いたのか、城戸は小首を傾げる。ダメだ、周囲の目がある。幾度となく繰り返された言い訳に、眉根を寄せる。何でもない、と首を振ると、城戸はそうかとあっさり引いた。  城戸は、知らない。  同じ生徒会に所属する、副会長、東雲志門(しもん)が自分を狙う暗殺者であることを。使命を与えられてから一年。俺はまだ、彼を殺すことができずにいる。
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