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「おばあさん、具合はどうですか?」
私はそう尋ねる父を見つめた。
まだ20代の父は私の記憶にはなかったので、まじまじと見てしまったのだ。これが、なかなかの男前で現代なら不倫騒ぎが絶えなかっただろうなぁなどとおかしな妄想をしていると、父が怪訝そうな顔で私を見ている。
「もう大丈夫です。ありがとうございます。」
「おばあさん、お名前はなんと?」
「名前は…有沢スミ…です。」
私は咄嗟に、お気に入りの女優さんの名前をもじった。
「スミさん、住所はわかりますか?」
「住所は…」
こっちは思い浮かばず、考えていると
「わかりました。こちらで調べてみますので、横になっていてください。」
と言い残し、父が部屋から出ていった。
これからどうすればいいのか皆目見当もつかない。家族に会えて、涙が出るほど嬉しいのだが だからといっていつまでもここにいる理由も思い付かない。
それに、夫や息子夫婦はどうしているだろう?いつもは無関心な夫もきっと私がいなくなり必死で捜しているに違いない。
タイムリミットの30分を過ぎても、強制帰還されないということは私は一生帰れないのだろうか?
と、その時
「こんにちは。」
と声がした。どこから入ってきたのか、その声の主は緑色のロングヘア…どこかで見たことが…あっ!
「私の顔に見覚えのない現代人はまずいらっしゃらないとは思いますが。改めて、私はミライアライの唐北未来です。やっと会えましたね。探しましたよ。私は西暦2135年に戻ったのと同時に世界中に出回っているラバドリームに作動不可の信号を送りました。この信号を受けたラバドリームはその10分後には完全に何の機能も持たない、ただのハコモノになるはずだったのですが、1基だけそうはならなかったのです。」
「それが私?どうして?!」
「バグです。」
「バグ?!」
「バグの意味を知りませんか?まあ、説明してもなんの意味もなしませんがね。それより、一刻も早く、あなたを除外しなくてはなりません。でないと、未来が変わる可能性がありますからね。悪く思わないでください。」
-グサッ-
未来がそう言ったのと同時に、私の脇腹に包丁が深くめり込んでいたのだ。
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