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この文面は世界中に拡散された。
厳密に言うと、この文面の後、ミライアライが自ら英語で書いた同じ内容の文面があった。
ミライアライは宇宙旅行の資金集めのためにラバドリームを売り出したのか。
ミライアライは未来人だったなどとは俄には信じがたいことだったが、それが真実なら、辻褄は合う。
一般的に1つの革新的な商品が開発されると必ず他の企業が何社かこぞって似たような物を売り出す。
しかし、タイムマシンはミライアライのラバドリームだけしかない。他のどんなに優れた技術者も開発なし得なかったのだ。
しかも、ミライアライ社のオフィスと工場の中は空っぽだった。ただ建物だけが残っていて、中の備品、機械類など全く何もない状態だった。
テレビ番組でも幾度となく特集され、オフィスで働く様子や工場の中を見たことがある。
あれは何だったのか?私たちはバーチャルを見せられていたのだろうか?
特集を組んだテレビ局も困惑していた。実際に社員や従業員にインタビューもしたと言うのだ。しかし、その社員や従業員の姿も消えていたし、行方もわからなくなっていた。
ミライアライの社長は唐北未来と名乗っていた。名字と下の名前をひっくり返すと、《ミライカラキタ》。ふざけたネーミングだ。写真の顔は中性的で髪は緑色のロングヘアー。
もう、どこからどこまでが真実のことなのか訳がわからなくなってきた。
と、このラバドリームもただのバーチャルを見せられていたのかもしれないと疑義を唱える人が出てきた。
未来人は私たちの個人情報をパソコンをハッキングするなどして、調べあげ、それを元にリアルに限りなく近いバーチャルを作り上げたのではないか?などという意見もあった。
それなら、未来に行けなかったことも納得できる。
さまざまな議論が錯綜する中、共通していたのは世間の誰もがミライアライが未来人だということに疑いを持っていなかったということだ。
私はラバドリームの前に立っていた。
何がどうあれ、私はラバドリームが使えなくなったことが残念で仕方なかった。
これがバーチャルだとしたら、それはそれで凄い技術だと思うし、それが違う気もした。
開かなくなったドア、パネルの電源が入らないなど、世界中のラバドリームは機動しなくなったのだ。
こんな簡易トイレみたいな物、中身がないなら使い道もない。私は思わず、ラバドリームに蹴りを入れた。
と、その時何かを感じたのだ。
私はふっと、ダメ元でドアの開閉ボタンを押した。
すると…ドアは問題なく開いた。
中に入ると、なぜだか、パネルの電源が入っている。
えっ?!
どういうことかを考えても、私の頭ではムリだ。それより、ラバドリームが動くのなら、私は生まれた時にタイムスリップしよう。
皆が言うように個人情報を元に作り上げているバーチャルか、それとも本当にタイムスリップできているのか確かめる為にも。
私は自分が生まれた日時と自宅を入力した。
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