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現代編
授業中、遊斗(ゆうと)がいつも通りポータブルゲーム機でアクションゲームをプレイしていると、隣の席に座っている同級生の美織(みおり)が、遊斗とゲーム機の間を教科書でさえぎった。
「もう、また授業中にゲーム? 真面目に授業受けないと、進学出来ないよ? 昼休みまで我慢したら?」
美織はおしとやかな、タレ目涙ボクロ眼鏡美人だ。遊斗に注意する時ですら、やんわりとたしなめる。
普通の男子なら一瞬でメロメロになり、言うことを聞くだろう。しかし彼女の姿を見慣れている遊斗は、全く動じなかった。
「どうせ補習受けるんだし、別にいいだろ」
遊斗は投げやりに言った。
遊斗は世間一般で言う「不良」の部類に入る。中学までは実際に暴力沙汰を起こしたこともあったが、高校に上がってからは、大人しく授業中にゲームをやる程度で済んでいた。
ところが美織はそれが許せないのか、おしとやかにため息をつき、遊斗を叱った。
「本当にいいの? 私と一緒に進学出来ないんだよ? 私の後輩になっちゃう」
「学校は同じなんだから、いいだろ」
「……よくないって」
美織はぽっと頬を赤らめ、言った。
「修学旅行だって一緒に行きたいし、運動会で同じ組で出たいし、一緒に高校を卒業したい。もっともっと……一緒にいたい」
「はぁ……しょうがないな」
遊斗はセーブし、ゲーム機を引き出しの中に仕舞った。
途端に美織の表情がパッと明るくなる。美織の顔に弱いのは、遊斗も同じだった。
「昼休みになったら膝枕してあげるね! それなら、寝ながらでもゲーム出来るでしょ?」
「恥ずかしいからやめてくれ」
「そこ、授業中にイチャつくな」
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