ep.6 馬鹿も食わないラブロマンス

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 薄暗い倉庫の中、不愉快な水音が響く。吐息混じり、腰をぐっと打ち付けられる都度漏れそうになる声を唇を噛むことで必死に耐える。 「結構悲しいよ、俺。君に好いてもらえなかったの……俺、元君のことかなり気に入ってたのになぁ、皆に壊されないでねえ。俺も、もう庇ってあげられないから」 「な、に……っ、ぃ……っ」 「そのままの意味だよ」 「っぅ、……くっ、んんぅ……っ!!」  会話とは程遠い、行為同様一方的に浴びせられる言葉を咀嚼して飲み込む隙さえ与えられない。  収まらない粘膜の痙攣、自分がイッてるのかすらも分からない。まるでそういうもののために作られたかのような錯覚の中、ひたすら神楽に中を犯される。戯れに手を重ね、唇を舐められ、性器の形を覚えさせられるかのようにじっくりと神楽は俺の中を味わうのだ。 「元君、……っ、元君の中、熱くて狭くて……っ、きもち……っ、はー……っん、も、ずっとこうしてたいな……っ、二人だけでずっと……邪魔なやつらなんてぜーんぶ無視してさぁ」 「っはぁ……っ、あ、か、ぐら……っ、ぅ、くひ……っ!」 「本当……っ、惜しいなぁ、元君」  神楽の射精が近くなるに連れ、抽挿の間隔も短くなっていく。腿を掴まれたまま腰を動かし、みっちりと詰まった性器で奥を犯された。そして腹の中、ドクドクと吐き出される熱に意識ごと押し出されそうになる。それもすぐ、腹の中の精液を粘膜に塗り込むかのように再開させられる抽挿によって現実へと引き戻されるのだ。 「っ、ひ、っ、待っ、も、出て……ッ、ぅ……っ、んん……ッ!」 「はぁ~? ……なにぃ? もしかして、俺が一回で満足できるって思ってる~? ……無茶なことを言うなぁ、元君。俺が君のことどんだけ好きだったか教えてあげるよ、たっぷりねえ」 「っ、は、ぅ、そ……ッ!」 「嘘じゃないよ~。ほら、わかるぅ? 俺のおちんちん、君にぎゅっと締められるだけで勃起収まんないのぉ」 「っひ、ぅ……ッ! や、ふ、ざけ……っ、んな……っ、ぁ……っんんぅ……っ!」 「まあ、元君がえっちすぎなのも悪いんだけどさぁ~。……ね、ほら、君も、気持ちいことのが好きでしょ~?」 「俺もそうだよ」と、精液で満たされた粘膜の中を更にぐちゃぐちゃと音を立て往復する神楽。カリにより掻き出される精液が溢れそうになりながらも、それを無視して神楽は先程よりも滑りの良くなった中を突き上げる。  逃れることの出来ない快感に身を捩ることしかできない。 「っ、は、ぉ、ま……っん! っふ、ぅっ、抜け、も、むり……っ」 「抜かないよぉ。全部君の中に出すから。一滴も残さず飲み干してねえ」 「ひ、ぅ゛……っ!」 「あは、前立腺ゴリゴリすんの好き~? 俺も好きぃ、ほら、上から押してあげるねえ」 「っ、ぃ゛ッ、んんぅ゛……っ!」  下腹部、神楽のものを飲み込んだそこを柔らかく指圧された瞬間、下半身により鋭利になった快感が広がった。 「まてっ、神楽、それ、ゃ゛ば、ぁ゛……っ、やば、ぃい……ッ!」  「イキそ? ……ふふ、いーよぉ。ここたくさん揉み揉みしてあげるから、たくさんイこうねえ」 「ぁ゛ッ、ぎ、ふ、……ッんんぅ゛……っ!」  上から圧されたり、指とちんこで内側と外側から前立腺を圧迫され、あっという間に逃げ場を失った快感は腹の中でぐちゃぐちゃに混ざり合う。吐き出して吐き出しても無尽蔵で込み上げてくる熱にただ気が遠くなっていく。  それなのに、与えられる快感ばかりは強くなっていくのだ。 「は、……っ、ん、元君、いい顔だねえ。きもちーい?」 「……っ、はー……ッ、ぅ、っひ、ぅ゛……っ」 「うんうん、そうだねえ。ちゃんとぎゅーってお尻の穴締められて偉いねえ……っ、ほら、元君の大好きな乳首も触ってあげるよぉ」 「っひ、ゃ、や゛ッ、め……ッ、ぇ……っ、んん……っ、ひ、ぅ……ッ!」  腰を打ち付けられ、奥を執拗に突き上げられながら乳首を柔らかく摘まれた瞬間、震動と感覚が連動するみたいに頭の中で噛み合って、恐ろしいほどの快感が全身に広がる。こんなの俺ではない、そう思いたいのに、手頃な玩具かなにかのように両胸の乳首を弄ばれながら突かれる度に開いた喉の奥から出したくもない声が漏れた。  そんな拷問のような行為をねちねち続けられ、しまいには乳首を抓られただけで下半身に力が籠もる。そんな俺を見下ろしたまま、神楽は笑った。 「……っ、ふふ、またイッたの? ……かわいいねえ、元々感じやすかったもんねえ、ここ。ほら、たくさんよしよししてあげるからねえ」 「……っ、ひ、く……ッぅ、あ……っ」 「ん、ほーら、逃げちゃ駄目だよぉ元君」 「っ、ひ、ぅ゛……ッ、んんぅっ、は、ぁ……っ、か、ぐら……っ、ん、っ、ぅ」  神楽にキスをされながら柔らかく胸ごと乳首を揉まれ、ビリビリと背筋に甘い電流が走る。唇を擽る舌を拒むという思考すら働かなくなってきて、当たり前のようにそれを受け入れてしまった自分に気付いたときには遅かった。  口元を緩めた神楽は「残念だなぁ」と笑った。それがどういう意味かも分からないまま、舌を絡められる。多分今俺の全神経が舌と乳首、あと下半身に溜まってて、神楽に触れられるどこもかしこもが酷く熱くなっては何も考えられなくなった。  乖離感が強くなるにつれ現実味は薄れ、そのくせ快感だけは増していく。前立腺と胸を同時に責め立てられ迎えた何度目かの絶頂に最早射精はなかった。痺れるような快感に体は耐えきれず、ガクガクと痙攣する下半身から噴き出すのは精液よりも尿に近い。びくびくと半透明の体液を撒き散らす俺の下半身を見下ろしたまま、神楽は「女の子みたいだねえ」と笑った。その言葉を理解できないまま外から前立腺を刺激され、休む隙もなく限界を迎える。  ここにきて気付いた。イケばイクほど体が過敏になり、快感が重ね塗りされるように濃くなってることに。 「も、ゃ……っ、も、やめろ、た、のむから……っ、ぉ、かしくなる……っ、からだ、へんに……っ、ぃ゛……っ、な゛る……っ!」 「はー……っ、駄目だよぉ元君、ここからが楽しいしところなのに……っ、ん……っ」 「っ、ぁ……ッ、ひ、ぅ゛ッ! ぅ、や゛……っ、かぐら、ッゃ゛、んん……ッ! むり、も、ぉ゛……っ!」 「無理じゃないでしょ~? ……っ、ほら、元君の中もたくさんちゅうちゅう吸い付いてくるよぉ?」 「っんな、わけぇ……っ、ぅ゛、んん……っ! ぁっ、ゃめ、んっ、ぅ……ッ、ふー……っ、ぅ、あ……ッ!」  いっそのことぶん殴られた方がマシだ。神楽のことを難なく受け入れ始めてる自分の体にゾッとして、その恐怖すらも麻痺し始めてる。  脳を侵す酩酊感、普段以上に鋭敏な神経は確かに神楽の言っていた『ワケが分からなくなる』という言葉が近い。前立腺を擦られる度にバカみたいに反応する体、まるで胸に性器がついてんのかってくらい感じてしまう乳首、目の前の男の顔すらも認識できなくなってくる。甘い声だけが落ちてきて、汗だくになった全身から精子が滲み漏れてるようなほどだ。  ――この感覚には、覚えがあった。  ああ、そうだ。あのときは薬はなかったけど、今みたいに初めての感覚ばかりで戸惑った。常識ごと塗り替えられていくみたいな、そんな経験が蘇る。 「――っ、ぃ、わかた」  脳と直結した口から声が漏れたとき、目の前、覆いかぶさっていた影がぴたりと動きを止めた。 「――、――」  そして影が何かを呟いた次の瞬間、太腿を掴まれる。ぐい、と下半身を抱き寄せられたと思った矢先、そのまま一気に奥を突き上げられた瞬間目の前が真っ白になった。 「――ッ、ぁ゛ひ……ッ!」 「……っ、君ってぇ、本当に酷いね……っ、酷いよ、元君……俺のこと、そんなに虐めて楽しい?」 「っ、んっ、く、ひ……ッ、ぅ゛……っぁッ、は、いッ、く……ッ、いく、また……っ、ぁ、……っ、ぃ゛ぐ……ッ!」 「あーあ……っ、ほんと、サイアク……萎えるんですけど。酷いよ、元君……っ、君を気持ちよくしてるのは俺だよ、元君……ねえ、ちゃんと見てよ。……っ、ほら、元君」 「ぁ゛……っ、ぃ、ぐッ、ぁ、そこ……っゃ゛、あ……っ! はっ、ふ、ぅ゛……っ!」  どくどくと血管の中を通っていく血液の流れる音すらも大きくなっていく。ケツの奥を亀頭で執拗に押し上げられ、ぐりぐりと天井ごとこじ開けられる度にカスみたいな精液もどきがだらだらと溢れ、腹を汚す。ただ受け入れさせられることができない中、ひたすら腹の中、ぶち撒けられる熱を受け入れることしかできなかった。 「っ、元君……ッ」  とうとう意識が遠退いていく一瞬、目の前、神楽がこちらを見下ろしていたのが見えた。  ――俺、なんで神楽とセックスしてんだ。  そんなことを思いながら、俺の意識はそこで音を立てて途切れる。  それからは半分起きていて、半分気絶してるような感覚が続いた。人間というのは一定のキャパを越えると防衛本能が働いて脳がなんかうまい具合に処理してくれるらしい。ケツの間に永遠に異物感はあったが、それを性器だと認識することもできなくなってた。目を開いたまま気絶してるような、質の悪い悪夢の映画を見せられてるような、そんな時間が続いた。聞こえてくる女みたいな情けねえ声も俺ではない。そう、脳が処理してくれた。  それでも、そんな処理ですら追いつかない肉体的な疲弊はどうしようもない。神楽が性器を引き抜いた瞬間、腹の中に溜まりに溜まった精液が塊のように溢れる感触を最後に俺はとうとう気絶した。   「それでぇ? これで本当に満足したのぉ?」 「ええ勿論! 俺が欲しかったのはこのデータだけなんで。痛がってるよりも気持ちよくて飛んじゃう~ってのがやっぱ人気なんで」 「うっわキモ。理解できないなあ。ま、元君が可愛いのはわかるけどさぁ」 「レイプものもそりゃ需要はあるんですけど、売上はイチャラブ甘々プレイには及びませんので」 「それお前んとこの変態界隈だけだろ?」 「輪姦もののが高値はつくんすけどね」 「うへえ~」 「じゃまあ、約束は守りますよ、会計様」 「……じゃねえと困るし」 「でしょうね。それに、俺もこいつには用があるんで」 「はいはい。……ま、どうせ勝ち目ないんだからどうなってもいいしねえ。……任せたよぉ、変態キモ眼鏡」
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