ep.2 酔狂ゲーム

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「俺的には野次馬に見られながらの撮影会のが好きなんだけどなー。『ああ……皆がいやらしい目で俺を見てる……ビクンビクン』みたいなさあ、全身視線で犯されてなにもされてないのにムラムラしちゃうみたいな」  俺の真似かそれ。さてはお前岩片側の人間か。 「……流石、童貞が考えることはなかなか気持ち悪いですね。私は大衆に囲まれるより個人の撮影会の方が萌えますね。プライベートハメ撮りなんて最高じゃないですか。アサガオの成長記録みたいな感じで撮るのもなかなか風情があると思いません?」  俺からしてみれば二人とも気持ち悪いことには違いないな。 「童貞舐めんなちくしょお!」と声を荒げる五条。どうやら童貞なのは間違っていないようだ。  というか二人の会話を聞いてる限りただの撮影会に聞こえないのだがこれはあれか、もしかして俺の貞操がまた危機に晒されていたりするのか。 「部長、カメラをこちらに渡してください。そのままじゃ撮れないでしょう」  なんとか五条の腕を振り払おうとする俺を他所に、言いながら正面に立つ能義は五条の手の中からカメラを取り上げる。  能義にカメラを渡す五条は「新品なんだから壊すなよ」と念を押した。 「大丈夫です。こう見えて機械には弱いのですが精一杯頑張らせていただきます」  全然大丈夫じゃなかった。 「つかさ、待てって。写真云々はわかったけど、なんで腕」 「や、だって尾張逃げるじゃん」 「逃げるとかじゃなくて、この後授業があるんだってば」 「おや、元さん。授業はサボるためにあるという言葉を知りませんか?」  知らねーよ、絶対今適当に言っただろ。 「さっすが副会長! わかってるー!」と同調してくる馬鹿眼鏡もとい五条。会長と会計があれならと思ったらやはり副会長も相当な馬鹿のようだ。怒りを通り越して呆れてくる。 「転校初日からサボりとか有り得ねえって」 「おや、真面目ですねぇ。安心してください、写真を撮ったらすぐ解放してあげますので」 「……なら早く撮れよ」 「では、お言葉に甘えて」  このまま渋っても埒が空かない。五条に捕まえられた今、能義のリクエストに答えるしか逃げる手が見つからなかった俺は能義を促すことにした。 「失礼します」薄く笑みながら呟く能義は、そう言って俺の制服に手を伸ばす。既にいくつか外したワイシャツのボタンを片手で器用に外していく能義に驚いた俺は「ちょっとタンマ」と声をあげた。 「いかがなされましたか?」 「いや、なんで脱がしてんの」 「部長から聞いてませんか? 私からのリクエスト」  リクエストって、確かさっき五条が注文をつけてきたやつか。言いながらも手を止めない能義に冷や汗を滲ませれば、背後の五条は「事後を再現した写真」と俺の耳元で続ける。 「……あ? 事後?」 「ええ情事後のような写真を撮るよう部長に頼んでたんですよ。いえ、勿論フリですよ。フリ。そんなに体を硬くしないでください」 「いや、なんでそんな写真……」  ボタンを外され、全開になったワイシャツから手を離した能義は呆然とする俺を見てにこりと微笑んだ。 「そうですねぇ。……敢えて言うなら個人利用ですかね」  絶対嘘だ。そうしらばっくれるように呟く能義は俺の下腹部へと手を下ろし、そのままベルトのバックルを掴む。  不意に昨日の神楽の言葉を思い出した。やはりまた今回も生徒会のゲームが絡んでいるのだろう。  ルールがよくわからない現在適当なことは言えなかったが、どうせろくなことじゃないはずだ。  ガチャガチャと留め金を外す能義に軽く身を捩らせるが、やはり背後からガッツリ捕まえられているお陰で身動きすら儘ならない。 「ほら、貴方はなにもしなくていいんですから力を抜いてください。顔が怖いですよ」  睨む俺に、能義は笑いながらベルトを弛める。そのまま足元までずり落ちるスラックスに目を向けた。  下が下着一枚だけになり、なんだこれ新手のいじめかとなんか情けなさで居たたまれなくなってくるがどうしようもない。 「やるんなら早く撮ってくんね? 結構寒いんだけど」 「ああ、そうですね。ちょっと待っててください」  肌寒い下半身に、俺がそう訴えかければ能義は手に持ったカメラに目を向けた。  慣れない手つきでそれを弄り始める能義に大丈夫かこいつと心配しながらも俺は能義を生暖かい目で見守ることにする。  そのときだった。後ろから羽交い締めていた五条の手が弛くなったと思った瞬間、いきなりワイシャツを開くように胸元を鷲掴みされる。 「ちょっ、えっ、なに」 「え?」 「いや、『え?』じゃなくてさ、お前どこ触って」 「どこって尾張のおっぱいに決まってんじゃん。雄っぱいって言った方がいい?」 「いや、意味が……ぁ、ちょ、まじやめ……ッ」  円を描くよう外側から内側へと胸板を揉み扱かれ、慌てて俺は五条から逃げようとするが胸元をしっかりと抱く手が邪魔で上手く逃げられない。伸びてきた五条の指先が乳首に触れ、胸を揉まれながら指の腹でくにくにと柔らかく潰される。 「おや、五条部長なにやってるんですか。私に面倒なことをやらせておいて随分と楽しそうですね」 「なにって副会長が自分からやるっつったじゃん。人聞き悪いなあ」  人の乳首弄りながらよく人聞きのことを言えるな。 「ふむ、確かにそうですね」と納得させられている能義にこいつは馬鹿なのかと呆れつつ、俺は胸を弄る五条の手を掴む。 「まじ、なんなわけ、これ。さっきフリっつったじゃん」 「いや、だって目の前で胸ばーんなイケメンいたらやっぱ揉むしかねーじゃん? せっかくだし転校祝いに乳首開発してあげるよ」 「まじ、意味わかんねえから……ッ」  慌てて五条の手を離そうとするが、両胸の突起を指で揉まれ指先から力が抜けていった。性感帯ではない場所をいじられ、全身にもどかしい感覚が込み上げてくる。  背筋が薄ら寒くなるようなことを耳元で囁かれ、なんかもう生きた心地がしない。 「おい、離せって。今なら許すからっ」 「まじ? 許してくれんの? んじゃ、揉みたい放題じゃん」  離したらって言ってんだろうが。  見事に都合のいい部分しか聞いてない五条に腸が煮え繰り返りそうになりながら、俺は「違う」と顔をしかめる。 「可愛いなあ、やだやだ言っちゃって。こうやって乳首ぐりぐりしてるとその内おっぱいじんじん熱くなって気持ちよくなってくるよ。一緒に試して見よっか。ほーらぐりぐりーぐりぐりー」 「ッや……っちょまじ、キモいから……っは、やめろ、指やめろッ」  五条の荒い息が耳に吹き掛かり、まるで小馬鹿にでもしているような言葉に耐えきれなくなった俺は顔をしかめながらそう振り払おうとする。どうやら咄嗟に俺の口から出た言葉がショックだったようだ。 「き、キモ……?!」と絶句する五条の動きが一瞬止まり、その隙を見て五条の腕から離れようとするが「もっと罵って!」とか言いながら背後から抱き締めてくる五条に再び捕らえられる。 「……ッぁ、や、ちょ……っ」  背後から抱きすくめられ、肩に顎を乗せてくる五条から逃げようとするがかなりしつこい。  ゴキブリ並みだ。もう今度から五条のことゴキ条って呼ぼう。 「あはっ、見て見てー尾張。ほら、わかる? 尾張のかわいー乳首もうこんなに固くなっちゃった」  突起から手を離し、それに触れず周りの乳輪をなぞるように指先で擦る五条はそう下品に笑う。  つられて視線を下ろした俺は、ぷっくりと尖った自分のそれになんだかもう恥ずかしさやら通り越していたたまれなくなってきた。  寒いからに決まってんだろ。まじこいつぶん殴りたい。  馬鹿にするように耳元で囁かれ、羞恥やら怒りやらで顔に熱が集まるのが分かった。  五条の腕を掴み離そうとしたとき、乳輪をなぞっていた五条の指先に思い切り乳首をつねられ、胸部に走る痛みに俺は小さく唸る。 「っ、ふ、ぅ……んんッ」  いきなり訪れた痛みによりじんじんと痺れる両胸の突起を指の腹でやわやわと潰すように捏ねる五条は「ごめんな、痛くしちゃって」と笑う。血液が集まるそこは先程の痛みで過敏になったらしく、ねちっこく執拗に突起を重点的に弄ってくる五条の指に押し潰され、体の芯がぼうっと熱くなってきた。  やばい。やばい。早くなんとかしないと。  先走る思考、それとは裏腹に段々五条の手が心地好く感じている自分がいた。 「では、元さんと言葉責めのチョイスがキモい部長こちらを向いて下さい。シャッター切りますよー」  ふと、カメラを準備し終えた能義は言いながらそんなことを口にする。 「またキモいって言った!」と唇を尖らせる五条を他所に、まさかこのタイミングでカメラを持ってきた能義に俺は目を見張った。
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