五「蒼空を断つ二人」

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……  甲板に叩きつけられた二人は転がりながら解け、痛みに耐えながら立ち上がっていた。  呪術によって整備された結界が、二人以外の出入りを禁じているのを確かめてから、原理は未だ殺意を消耗しきらないシノニムに向かい合う。 「うう、うぅぅううぅ」  シノニムは両腕で自分を縛るようにしながら唸っている。  原理は落ち着かない心臓を抑え込もうとするように、深呼吸していた。 「シノ、まだ続ける気なのか」 「…………終わらせるのはわたしじゃない」  その返答に眉を顰める。頑なだ、と思うことも面倒になっていた。 (こんなこと、いつまでも続けるものじゃない)  ぎり、と歯を食いしばって。ならば、俺が終わらせるしかないかと聞こえないように囁く。シノニムは、そんな原理の心情など知らず、再び風を撃ち出してきた。  真っ直ぐに向かってくるそれを、原理は躱さない。  ただ、右の拳を突くことで弾いてかき消す。  構えた拳の先に揺らめく蒼い霊力が、彼の心の落ち着きを示していた。  踏み出す。一歩目からトップスピードだった。  それを拒絶するように、シノニムは風を連続で撃ってくる。無数に広がる鋭い刃が迫るけれど、原理はそれを一つ一つ、丁寧に躱していく。  風を刃にする際に、シノニムは空気を集めて一本の線にしているのだが、そのラインが通る際のすぐそばにある、急激な気圧差による空気の流れ。それに巧く乗っかって斬撃を躱していくのだ。 「当たらない……?」  訝るのも一瞬、シノニムは両腕に紅い光を灯し、向かってくる原理の体躯に全力で叩きつける。 「ふっ!」  同時に原理が掬い上げるように左腕を振り上げる。  蒼い光と紅い光は衝突して弾ける。 「うおあっ」  双方が力の反発に圧されて大きく吹き飛んだ。甲板を転がりながら、それでも二人は相手を見落とすことなく睨みつける。  受け身を取って起き上がると、原理もシノニムも互いに霊力を右手に集中させていた。 「受け止めてみせろよ、ウィンガード!」 「もうどうだっていいんだよ、こんなこと!」  苛立ちと、絶望を混ぜ合わせたシノニムの声に、原理はそんなことないだろと思いつつ、あるだけの力を可能な限り凝縮して―――、
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