五「蒼空を断つ二人」

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 泣きじゃくるシノニムの背を撫でる。細く小さい身体が、ここまでの大規模な破壊を行ったのかと考えると、今更恐ろしくなる。  確かに、世界を壊してしまうだけの力は持っているのだろう。 「だけど、壊すべき世界なんか、今はもうない」  シノニムの弱さは、決して異端なものではなく、誰もが持ちうるごく普通のものでしかなく、ここまでの結果をもたらしたのは、彼女の環境が壊れすぎていたからにすぎないのだ。 「わたし……昔にね。大切な人を、殺したんだ」 「うん」 「その人の感じが、ずっと頭の奥で、残ってて……」 「うん」 「最初にここに来て、ゲンリくんが見えたときに、……似てるって、思った」  その時は思い出せなかったけれど。 「そうなんだな」  最初から、やけに原理に対して甘えるような行動をとっていた理由。  それは、忌方原理とギリアン=ルライグの共通している何かを、彼女が感じ取っていたからなのかもしれない。 「だから、殺されるなら、ゲンリくんじゃなきゃ駄目だって、思ってたのに」 「…………」 「重ねちゃいけないけど、でも。罪と責任は、あったから」 「そうか。言いたいことは解ったよ」  原理は、そう言って。シノニムを両腕で強く抱き締める。驚いたように全身をびくりと跳ねさせる彼女には構わず、耳元で呟くように口にする。 「そんな責任の取り方をされたら、じゃあ。俺がシノを殺した罪と責任はどうすればいいんだろうな?」 「あ……」 「もっと違うやり方があるんじゃないのか。そうは思えないかな。少なくとも、俺は人を殺せないし、シノを、殺したくはない」  原理の内心は、異常に過熱していて。落ち着いているように見せても、心臓は戦闘時以上に早鐘を打っている。  それがどういう感情なのか、原理はとっくに理解してしまっていたのだが。 「だからさ、」 「だったら、」  二人は同時に言っていた。 「ここで、一緒に居てくれないかな?」
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