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泣きじゃくるシノニムの背を撫でる。細く小さい身体が、ここまでの大規模な破壊を行ったのかと考えると、今更恐ろしくなる。
確かに、世界を壊してしまうだけの力は持っているのだろう。
「だけど、壊すべき世界なんか、今はもうない」
シノニムの弱さは、決して異端なものではなく、誰もが持ちうるごく普通のものでしかなく、ここまでの結果をもたらしたのは、彼女の環境が壊れすぎていたからにすぎないのだ。
「わたし……昔にね。大切な人を、殺したんだ」
「うん」
「その人の感じが、ずっと頭の奥で、残ってて……」
「うん」
「最初にここに来て、ゲンリくんが見えたときに、……似てるって、思った」
その時は思い出せなかったけれど。
「そうなんだな」
最初から、やけに原理に対して甘えるような行動をとっていた理由。
それは、忌方原理とギリアン=ルライグの共通している何かを、彼女が感じ取っていたからなのかもしれない。
「だから、殺されるなら、ゲンリくんじゃなきゃ駄目だって、思ってたのに」
「…………」
「重ねちゃいけないけど、でも。罪と責任は、あったから」
「そうか。言いたいことは解ったよ」
原理は、そう言って。シノニムを両腕で強く抱き締める。驚いたように全身をびくりと跳ねさせる彼女には構わず、耳元で呟くように口にする。
「そんな責任の取り方をされたら、じゃあ。俺がシノを殺した罪と責任はどうすればいいんだろうな?」
「あ……」
「もっと違うやり方があるんじゃないのか。そうは思えないかな。少なくとも、俺は人を殺せないし、シノを、殺したくはない」
原理の内心は、異常に過熱していて。落ち着いているように見せても、心臓は戦闘時以上に早鐘を打っている。
それがどういう感情なのか、原理はとっくに理解してしまっていたのだが。
「だからさ、」
「だったら、」
二人は同時に言っていた。
「ここで、一緒に居てくれないかな?」
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