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「ははは、やっとゲン君も理解したみたいだね」
「笑えることなのかな、そんな無邪気に」
いいだろう? と尸遠は心底から面白そうにしていた。
「人の成長を見れるって、いいことだと思うよ。そうは思いませんか、四方さん」
通信の向こうで、杏樹が迷惑そうに唸る声で返す。
「そこで私に振らないでほしい。別に忌方君の色恋に対して抱く感想なんかないわよ」
「えー? でも、貴女もゲン君のこと狙ってませんでした?」
「穿ちすぎ。私には弟以上の存在には見えないの」
まあ、そう言うならそうだろうけれど。と、尸遠は寄り掛かる壁から青空を見上げた。時刻は判らないけれど、南中したあたりから、少しだけ太陽が傾いている。
いつもの通りに、地球は回っているのだった。
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