終「世界の終わりと人間の枠」

4/8
前へ
/130ページ
次へ
「ところで」  清籠は燃え尽きた煙草を灰皿に押し付けて、思い出したように口にした。 「確かに世界を壊したのはシノニムなのだろうが。それ以上に異形種が人を喰らうのには理由があるらしいな」 「そう、なのか」  言いながら、清籠は端末を操作してディスプレイを掌の上に表示する。  投影型ディスプレイはかなり昔に実用化されていたらしいけれど、それが今まで生き残っているのが不思議なものだった。  最初はゴーグルなどが必要なARディスプレイだったらしいが。 「人間の生命力は他の生物に比べて突出しているからな。それを蓄えるために人を、正確には人の魂を呑み込むというな」 「魂を?」 「これは遠い昔の真種異形の在りようだったらしい。私は見たことはないがね」  ネフィリムがそれに当たるが、詳しいことはよく解らない。  覚醒者と似ているようであまり似てはいないかな、と独り言ちるように続ける。 「どっちなんだよ」 「さあ、どちらだろうね。まあ、これから向かう『彩黒』でも情報は手に入るだろうから、調べてみると良い」 「彩黒? 日本の南端にある特殊環境の島だったな」  ああ、と清籠は頷く。  星の砂が噴出する島で、火山島。その広大な島は、多数の人間が居住していて、定期的に鵬が寄港する。 「俺が降りるのは初めてになるかな」 「二年前は戦闘で倒れてたものな」  あれは不覚だったなあ、と思い出す。 「とにかく、あの島は世界崩壊の影響を受けてはいないから、色々知れることはある筈だろうな。覚醒者に関してもね」  だといいんだがな、と原理はさほど期待はしなかった。
/130ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加