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「ところで」
清籠は燃え尽きた煙草を灰皿に押し付けて、思い出したように口にした。
「確かに世界を壊したのはシノニムなのだろうが。それ以上に異形種が人を喰らうのには理由があるらしいな」
「そう、なのか」
言いながら、清籠は端末を操作してディスプレイを掌の上に表示する。
投影型ディスプレイはかなり昔に実用化されていたらしいけれど、それが今まで生き残っているのが不思議なものだった。
最初はゴーグルなどが必要なARディスプレイだったらしいが。
「人間の生命力は他の生物に比べて突出しているからな。それを蓄えるために人を、正確には人の魂を呑み込むというな」
「魂を?」
「これは遠い昔の真種異形の在りようだったらしい。私は見たことはないがね」
ネフィリムがそれに当たるが、詳しいことはよく解らない。
覚醒者と似ているようであまり似てはいないかな、と独り言ちるように続ける。
「どっちなんだよ」
「さあ、どちらだろうね。まあ、これから向かう『彩黒』でも情報は手に入るだろうから、調べてみると良い」
「彩黒? 日本の南端にある特殊環境の島だったな」
ああ、と清籠は頷く。
星の砂が噴出する島で、火山島。その広大な島は、多数の人間が居住していて、定期的に鵬が寄港する。
「俺が降りるのは初めてになるかな」
「二年前は戦闘で倒れてたものな」
あれは不覚だったなあ、と思い出す。
「とにかく、あの島は世界崩壊の影響を受けてはいないから、色々知れることはある筈だろうな。覚醒者に関してもね」
だといいんだがな、と原理はさほど期待はしなかった。
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