一「蒼と赤」

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……  異形と呼ばれる敵が、この世界には存在している。  人間を襲い、喰らって力に変える「捕食者」。どこから現れたのかもわからない、その化け物によって人間は陸地を追われ、現在原理たちが搭乗する大型の艦で生活をしているのが現状だった。 「で、さ。結局指摘されてたな、空のこと」  原理は上着を脱いで杏樹に返すと、ミーティングをそんな風に振り返った。流石に杏樹も空の分の制服を用意することはできないらしく、同じように呆れたような視線を原理の肩の上で落ち着いている空に向けていた。  何で肩車なんだ、という疑問を彼女は完全にスルーして、「えー?」と面倒そうに声を上げる。 「ボクだって忙しいんだよー? 降りてくる仕事は期限までにこなしてるしさ」  スタイルにはこだわらないタイプの人間だった。仕事が出来るが態度が悪いという、人間として欠陥のあるタイプとも言えるけれど、空はそんなことを気にはしていなかった。  それだけ彼女が能力のある人間だから、ということなのだが。 「るらるらー」 「頭を揺らすな。重心がブレる」  というか空が身体を左右に揺らしている。楽しそうだ。 「しかしまあ、原理の髪は綺麗だね。銀色って珍しいけど」 「……こんなんは隔世遺伝だからなあ。あまり誇れないよ」  原理は嬉しくもなさそうだった。親や兄が皆そろって黒髪なのに、原理だけが銀髪というのは不思議だ。遺伝子的にそんな要素はなかったはずなのだけれど、と考える度に不快になる。 「眼も蒼いものね。珍しくはないけど、あまり日本人じゃ見ないよね」 「俺、日本人じゃないのか?」  そんな疑問に杏樹が即答で否定した。 「純系の日本人でしょ、君。自分が一番わかっているくせに」  黙るしかなかった。  とにかく、と杏樹は話題を切り替える。 「戦力の増強は必須の案件ね。これからどの人が部隊に入るのかは分からないし、それは将来的な話だけれど。それでも今の戦力を向上させる手段を考えないとね」 「いつもの通りにいつもの話って感じだったけどな。半年後に大規模な作戦を組んでいるって言ってたけど、今の戦力じゃあ心許ないというか」  仕方ないね、と空は諦め気味だった。難しいことであるとは皆が知っているのだから、堂々巡りでしかないのだ。
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