変わらないもの

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変わらないもの

朝が来た。 お母さんが言った。 「おはよう、今日は行けるの?」 心が苦しみの悲鳴をあげる。 「行くね。」 挫けるな。 行こう。 今日も彼がむかえにきてくれる。 私の頭を撫でて お母さんが微笑む。 「無理せずに頑張りなさい。」 感情が込み上げてくる。 溢れるような感情に押し潰されないように。 「大丈夫。」 そう言った。 お母さんの作る朝ごはんが少ししょっぱかったのは 私のせいだ。 準備しなくちゃ。 時間割もきちんと見る。 大丈夫。 いける。 彼が待ってるもの。 今日は髪を括ろう。 丁寧に髪の毛ひとつひとつを とかす。 ブラシでとかされた髪は艶を出している。 上に持ち上げるように。 ポニーテールを綺麗に作った。 最後に束ねた毛を綺麗にお母さんにまとめてもらう。 「似合ってるわ」 お母さんが嬉しそうに声を高めた。 ベルが鳴る。 彼が来た。 似合うと言ってくれるだろうか。 ドキドキしながら ドアを開ける。 「いこう!」 彼が声をあげた。 彼のうきうきとしたその様子は 前の彼を思わせた。 髪のことなんてどうでも良くなるような、 そんな声だった。 「うん!」 私も同じ大きさで声をあげた。 ポニーテールを揺らす。 私は今日から変わるんだ。 きっと変わらないものなんてないから。
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